労働党の国政政策
私たち労働党は、「経済・産業」「社会保障・高齢者福祉」「子育て・教育」「労働と生活」「環境・エネルギー」「民主主義と立憲主義」「安全保障・外交」「デジタルと科学技術」「地方創生」の9分野にわたる重点政策を掲げています。
それらの主要な政策群については、政策トップページをご覧ください。
このページでは、そうした柱立てには直接含まれないものの、司法改革、農林水産、情報通信、多様性政策など、私たちの社会の持続性と包摂性にとって重要なテーマを取り上げています。
一見すると細やかな制度論や局所的な論点に見えるかもしれませんが、いずれも「誰もが暮らせる社会」の実現に向けた労働党の視座を示す政策群です。
注記(重要) 労働党は現在、ひとり政党です。
本ページに記載された政策は、党首である私個人の提案にすぎません。
党員が増えれば、当然ながら撤回・修正される可能性が高い暫定案です。また、ひとりで政策を組み立てているため、まだ十分に整理されていないものや、検討中の案も多く含まれています。
「こんな考えもあるのか」くらいの気持ちで、ゆるく読んでいただけると助かります。
憲法・統治機構
憲法改正
私たち労働党は、「憲法をどう変えるべきか」という問いに対し、西洋的な社会契約論ではなく、日本古来の感覚、すなわち神道的な“合意”と“空気”の思想を起点に再構築する試みを進めています。契約より合意、罪と罰より穢れと禊、個人主義より“和”の重視。そうした枠組みを下敷きにしながらも、基本的人権・国民主権・法治主義という近代立憲主義の三本柱は堅持します。日本にとって「自然な」立憲主義とは何かを、ゼロベースで問い直しています。
安全保障の観点からは、自衛隊を軍隊として憲法に明記し、かつそれを「行政機関の一部」と位置づける構想を検討しています。これは単なる軍事力の格上げではなく、戦争状態における行政・立法・司法それぞれの責任と役割を明確にすることが目的です。とくに戦争の「開始」だけでなく、「終了」や「終戦処理」における責任体制――たとえば戦後の戦犯追及や復興統治のルール――を明文化する構想です。
また、基本的人権の内容そのものを問い直す作業にも着手しています。抽象的な“幸福追求権”を出発点としつつ、そこにプライバシー権や環境権といった現代的権利を組み込むことを検討しています。どの権利が絶対的か、どの権利が相対的か、その境界線を明記することが、予防的な人権保障に不可欠だと考えています。
さらに、いわゆる三権分立の構造についても再考します。台湾の「監察権」「考試権」に見られるように、行政・司法・立法以外の統治機能を憲法的に認知するモデルも視野に入れつつ、日本にとって望ましいバランスと抑制機構とは何かを模索します。現行憲法の“無意識的な前提”をほぐしながら、未来志向の設計を試みます。
👉 ブログ記事(外部) 「風田二都の新憲法草案シリーズ1. 神道ベースの国を検討しています」
統治機構改革・三権バランス
現代の日本の統治構造には、少し偏りがあるのではないか――私たちはそう考えています。とくに内閣官房や内閣府といった組織に政策調整や予算配分の機能が集中しすぎており、“官邸主導”を超えた“行政主導”の様相を呈しています。本来ならば、立法や司法にも政策形成の責任や関与が求められるはずですが、それをどう制度として実現するかについては、まだ答えが見つかっていません。
また、政策実施にあたる多くの独立行政法人や特殊法人も、数が多く、役割の重複や不透明な存在が少なくありません。これらの統廃合や見直しは喫緊の課題であると考えていますが、具体的な再編の設計は、正直まだ思いついていないのが実情です。ただし、既得権益として温存されている状態をそのまま放置することには、強い懸念を抱いています。
一方で、実現可能な改革として特に重視したいのが、国会の政策立案機能の強化です。議員立法の割合が少なく、実際の立案も官僚依存である現状を変えるには、国会調査局や法制局の機能強化が不可欠です。代議士一人ひとりが、自らの考えに基づいて法律を構想し、それをわかりやすく説明できるよう、専門的な補佐体制と、国民への説明手段の整備を強く求めたいと考えています。
司法・立法の人事や監視機能のあり方、とくに検察官や裁判官の任命・再任の在り方についても、今後の大きな検討課題です。とはいえこれらは、憲法改正における「三権分立の再設計」と切り離せないテーマであり、現時点で拙速な案を出すことは避けたいと考えています。むしろ、「どうあるべきか」ではなく「何が歪んでいるか」を丁寧に共有することから始めるべきではないでしょうか。
議員定数・選挙制度
現行の衆議院選挙制度――小選挙区比例代表並立制――について、私たちは見直しの必要があると考えています。最大の理由は 「一票の格差」問題 です。人口分布に応じて区割りを変えるだけでは対応が追いつかず、中選挙区制の復活や完全比例代表制の導入なども、あらためて検討の対象とすべきだと考えます。なにより、区割りの変更を「特例的対応」ではなく、制度的に組み込む仕組みが必要です。選挙制度は、人口とともに動くものであるという前提を、制度そのものに埋め込むべきではないでしょうか。
参議院の「合区」の是非については、視点を変える必要があると考えています。そもそも参議院は、地域代表である必要があるのか? 私たちはそうではなく、多様な価値観や社会的属性を代表する議会であってほしいと考えます。地域の代表制は衆議院に任せ、参院は「職業」「世代」「マイノリティ」など、さまざまな軸で代議が成立するよう制度設計を見直すべきではないか――そのような問いを提起したいと考えています。
選挙権年齢や被選挙権年齢の引き下げについては、現時点では明確な立場を定めていません。ただし、供託金の高さが政治参加の障壁となっている現状には強い問題意識を持っています。とりわけ参議院は「良識の府」であるからこそ、資本の多寡ではなく、思想や見識に重きを置いた多様な候補者の登場が求められると考えています。供託金制度は、その理念と制度がかみ合っていない典型例かもしれません。
在外邦人の選挙参加や電子投票の導入については、慎重に、段階的に進めるべき領域と捉えています。技術面・セキュリティ面・本人確認の仕組みなど、多くの課題がありますが、それを理由に永久に放置するのではなく、 「小さく始めて、ゆっくり育てる」 方針で改革を進めることが望ましいと考えます。
地方分権・道州制
私たち労働党は、地方分権の推進にあたって 「現場に権限、国に財源」 というモデルがもっとも現実的かつ合理的だと考えています。地域ごとの課題や暮らしの感覚に即した施策を行うには、国よりも基礎自治体のほうがずっと向いています。だからこそ、実施権限はできる限り自治体に委ねるべきです。一方で、税源を完全に地方に任せてしまうと、財政力の格差がそのまま行政格差になってしまうおそれがあるため、税の徴収は国が担い、地方に再分配するかたちがよいと考えています。
この「再分配」の手段として重要になるのが、一括交付金や地方消費税の仕組みですが――正直なところ、現時点ではこの領域に詳しくありません。どのような配分が妥当なのか、自治体間の公平性をどう担保すべきか、判断材料が不足しています。 ここについては、ぜひ専門家の知見をお借りしながら、制度の設計に取り組みたいと考えています。 仲間になってくれる方、大歓迎です。
いわゆる道州制や特別自治市、広域行政のような「大きな自治」については、あまり積極的ではありません。感覚的なものですが、「自治」は小さくあるほうが、きめ細かさや住民参加にとって望ましいと考えているからです。ただし、テーマごとの広域連携には可能性を感じています。たとえば、ごみ処理・交通・防災・水資源など、自治体単独では手に余る問題について、必要に応じて“目的別の連合”を組む仕組みがあれば、柔軟かつ効果的な行政が実現できるのではないでしょうか。
首都機能の分散については、レジリエンス(災害時の対応力)の観点から、賛成の立場です。ただ、机上の議論だけでなく、まずは立法府自身が態度で示すべきです。国会の小委員会を地方の議事堂で開くなど、 “率先して東京を出る” 行動によって、分散の現実性と意義を社会に示していくことができるのではないかと考えています。
行政改革・デジタル政府
私たちは、行政のデジタル化を目的化するのではなく、「暮らしやすさ」「働きやすさ」を支える手段として扱うべきだと考えています。行政手続のオンライン化については、理想としては100%を目指していくべきでしょう。しかし、すべての人が常にインターネットにアクセスできるわけではありません。ユニバーサルアクセス(誰でも手続きにたどり着ける状態)の維持を最優先にしたうえで、オンライン化は段階的に、無理のないかたちで進めたいと思います。また、行政システムの多くは実は住民よりも内部職員の業務効率に関わる部分が大きく、そちらの改善こそ重点対象とすべきです。
マイナンバーをはじめとするデジタルIDの活用範囲についても、拡大の方向性には賛成しますが、慎重な法改正が必要な領域であるため、時間がかかることをご理解いただきたいと考えています。本人確認・情報連携・プライバシー保護といった重要な原則を崩さないよう、段階的に少しずつ制度と運用を整えていく方針です。
行政サービスを支えるシステムのパブリッククラウド移行については、国(デジタル庁)が環境を用意し、自治体が主な利用者となるという原則を明確にします。そのためには、自治体現場のユーザビリティを把握できる体制整備が不可欠です。出向やヒアリング、現場レクチャーができる人材を国が確保し、同時に技術に強い官僚(技術官僚)をきちんと採用・育成する仕組みを整えていきます。
そして、生成AIなどの活用について議論する以前に、まずは公文書館の整備・拡充を優先したいと考えています。行政が何をどう判断し、どう変わってきたのか。その情報が残されていない状態でAIに何を学ばせるのでしょうか。 記録がないところに未来は作れません。まずは過去を残す体制を。 それが私たちの第一歩です。
公文書管理・情報公開
私たちは、AI時代の「最重要データ」は公文書であると考えています。何が議論され、どう決まり、なぜそうなったのか。その経緯こそが、未来の判断や技術の基盤になります。そのため、電子公文書の保存期間は十分に長期化し、かつ改ざんが事実上不可能となるような保存体制を構築する必要があると認識しています。具体的には、国内の複数拠点に閉域ネットワークで保管し、災害や政変にも耐える構造を目指します。
公文書に準じる存在として、クロスオーバー文書――メールやSNS、チャットログなどの扱いも議論が必要です。ただし、これらの全文保存にはコストも倫理上の配慮も必要です。私たちは、要点のみをAI等で抽出・要約したかたちで公文書化し、保存する方式を支持します。人力で整理できないほど大量になった情報に対してこそ、デジタル技術を活かすべきです。
情報公開については、現行制度の硬直さと逆方向性に懸念を持っています。閲覧手数料の値上げや請求手続の煩雑化は、実質的なアクセス制限です。私たちはあえて、情報公開請求手数料の「値上げ」には賛成しつつ、公開範囲の拡大とデジタル提供の義務化を主張します。要するに、「もっと手軽に、もっと広く、きちんとコストは取る」方向へのバランス調整です。
すでに進んでいるオープンデータ政策については、おおむね評価しています。ただし複数の類似ポータルが並立しており、ユーザー視点での使いにくさが課題です。データカタログサイトの統合・整理・API整備を進め、教育・研究・開発・報道などさまざまな目的に活用できる形に整備し直す必要があります。「使われない公開」は、公開していないのと同じです。
外交・安全保障
外交戦略・近隣外交
私たち労働党は、日本外交の柱に「多国間主義」を据えるべきだと考えています。どの国かひとつに依存するのではなく、複数の国と協調しながら、変化の激しい国際社会をしなやかに生き抜く。これが私たちの基本姿勢です。そのうえで、日米同盟は可能な限り深めていく方針ですが、あくまで 「依存しすぎない」という前提 に立ちます。米国そのものが内政的・外交的に不安定化するリスクを抱えていることを忘れてはなりません。強固な同盟は重要ですが、それが唯一の選択肢であるべきではないと考えます。
日本にとって最も身近な近隣諸国――中国、韓国、ロシアとの関係については、「対立しないこと」「仲良くすること」がまず大前提です。もちろん、それぞれの国との関係には歴史的背景や安全保障上の課題がありますが、それを乗り越えるには、相手の立場を理解し、違いを踏まえた対話を重ねていくことしかないと考えます。一方、もしも他国が明らかに侵略的または高圧的な態度を取っている場合には、単に非難をするだけでなく、「ではその行為をどう収めるつもりなのか?」「出口戦略はあるのか?」と問いかけ、対話の接点を持つ姿勢を維持します。
いわゆるインド太平洋構想やクアッド(QUAD)といった戦略枠組みについては、さらにテクニカルな知識と戦略的判断が必要だと感じています。現時点では党内に十分な知見がなく、立場を明確にするには力量が不足していることを率直に認めます。こうしたテーマについては、外交安全保障に明るい有識者や経験者の方と協議を重ねながら、今後の方向性を検討していきたいと思います。
二国間交渉と多国間協調のバランスについては、 あくまで多国間主義を重視する立場を基本とします。 日本という一国だけで世界を変えることはできません。けれど、複数の国と合意を築いていくことで、私たちが信じる「秩序ある平和」に近づいていくと信じています。
防衛力整備・自衛隊運用
私たち労働党は、防衛は「やりたくてやる」ものではなく、「必要だから責任を持ってやる」ものだと考えます。反撃能力(スタンドオフミサイル)の保有については、憲法改正の議論を含む難しい課題ではありますが、自主防衛体制の確立という観点からは賛成の立場を取ります。とはいえ、軍拡を競うだけでは何も生まれません。だからこそ私たちは、アジア太平洋地域における「地域軍縮会議」の開催を、日本から積極的に呼びかけるべきだと提案しています。
防衛費のGDP比2%目標についても、「やらざるを得ない」というのが正直な立場です。費用の捻出は簡単ではありません。財源としては、社会保障費の一部見直しや富裕層への資産課税を見込んでいますが、本音としては、どちらも極力やりたくない選択肢です。米国に全面依存していればこうした財源論に悩まずに済むという考えも頭をよぎりますが、それでは主権国家としての責任を果たせないのではないか、という自問に立ち戻っています。
予備役や即応予備自衛官の拡充については、積極的に進めていく方針です。とくに注力したいのは、女性の自衛官・予備自衛官の登用です。ジェンダー平等の視点からも、また多様な災害対応・地域連携を重視する立場からも、自衛隊内の多様性の確保は防衛力の向上につながると考えています。
自衛隊の組織的な位置づけについては、文民統制(シビリアンコントロール)の再定義が必要だと考えます。私たちは、自衛隊を「軍隊」として憲法に明記したうえで、あくまで行政機関の一部として位置づけ、その統制と責任を明確に内閣が負うべきだと主張します。ただし、それで完結させてはなりません。戦争という極限状況においてこそ、立法や司法の役割も明確化すべきです。三権が協力し合いながら、戦争の開始・終結・責任の所在を明文化する統治体制を構築することを目指します。
経済安全保障・サプライチェーン
経済安全保障という言葉が広く使われるようになりましたが、私たちはその範囲や優先順位について、冷静かつ丁寧に線引きをすることが必要だと考えています。たとえば機微技術や半導体への投資支援・輸出管理といった分野については、技術を囲い込む方向性には慎重です。民主主義国家にとっての最大の脅威は、物理的な攻撃ではなく、誤情報やプロパガンダによる社会的な分断・信頼崩壊ではないかと私たちは考えます。そのため、これらの分野の重要性を認めつつも、優先順位としては高くないと判断しています。
一方、サイバー空間・宇宙・電磁波といった新たな防護領域については、今後の安全保障に不可欠なテーマであると認識しています。とはいえ、現時点ではまだソリューションやガバナンスの検討段階にあるため、具体的な政策立案については慎重に構えておく必要があると考えています。課題を見極めるフェーズにあるという立場です。
同様に、海底ケーブルや重要港湾といった物理インフラの防護も今後の日本の存立基盤にかかわる問題であり、国として取り組むべき対象であることは間違いありません。しかし、こちらもまた技術・制度両面での設計作業が必要であり、急いで何かを断言する段階にはないと捉えています。
一方で、私たちが強く優先したいのが、資源や食料の輸入経路の多角化です。特定の国やルートへの依存を減らすことで、価格高騰や供給停止のリスクを下げることができます。この分野の担い手は主に民間であるべきですが、だからこそ政府は、輸入協定の締結、通商ルール整備、認証制度の調整など、周辺の「雑務」に力を注ぐべきです。国がやるべきことは、民間がスムーズに調達・取引できる環境を整えること――それに尽きます。
国際協力・ODA
私たちは、政府開発援助(ODA)を「善意だけで完結する政策」だとは考えていません。相手国の制度の健全性や地政学的な現実との折り合いをつけながら、淡々と、粘り強く続けるべき外交政策の一環だと位置づけています。
「質の高いインフラ」供与については、正直に言えば非常に難しい取り組みだと感じています。たとえば不正や腐敗、人権侵害、環境破壊といったリスクは、実施国の行政体制によって大きく左右されます。一方で、中国による「一帯一路」構想がすでに強いプレゼンスを示していることを踏まえると、日本だけが潔癖であろうとしても意味をなさない場面もあります。私たちは、リスクをゼロにできない前提のもとで、情報開示や環境社会配慮のルールを可能な限り維持しながら、淡々と供与を続けるしかないという立場をとります。
ODAの根幹にあるもうひとつの難題が「債務と支援のバランス」です。支援が新たな負債を生み、かえって途上国を追い込んでしまう事例も少なくありません。この問題に対して私たちは、資金よりも人、特に教育を通じた人的資源への援助を日本の基本方針として明確化すべきと考えています。学校づくりや教員育成、奨学金制度など、長期的な人材投資によってこそ、真に持続可能な自立支援が実現するはずです。
気候変動対策ファイナンスについては、さらに難しい分野です。資金の拠出先や使途の検証が難しく、日本の削減実績としてカウントされる仕組みへの不信もあります。しかしそれでも、国際的に一定のプレゼンスを保つためには、拠出をやめるわけにはいかないというのが現実です。私たちは、 「簡単ではないが、やめない」 という、地味で誠実な立場を取ります。
一方で、人的交流――留学生の受け入れや青年海外協力隊の拡充――については、はっきりと積極推進の立場を取ります。歴史を振り返れば、日本に留学した孫文のように、日本流の考え方を持ち帰った人々が、その国の変革に関わっていった例もあります。また、JICAなどを通じて海外で経験を積んだ日本の若者が、視野を広げ、やがて国際社会で重要な役割を担うことにもつながります。この「人を通じた国際信頼」は、外交の基盤として極めて大切なものです。
移民・難民・在外邦人保護
国際的な人の移動が増えるなかで、日本の受け入れ体制もまた、柔軟さと厳格さの両立が求められています。 私たちはまず、難民認定手続の迅速化を進めるべきだと考えています。保護すべき人を早く守り、そうでない場合は不安定な滞在を長期化させない仕組みが必要です。現在のように認定されないまま申請が繰り返され、収容が長期化し、当人が困窮していく構図は、申請者にとっても日本社会にとっても不幸です。そのため、再チャレンジの回数や期間の制限を設け、保護するなら早く保護、難しいなら早く返すというメリハリのある制度へと見直していきます。
同時に、収容施設の環境改善も欠かせません。人権的配慮と生活安全は最低限守られるべきものです。 一方で、過度な人道主義によって制度全体の信頼が損なわれ、結果的にヘイトスピーチや分断を生んでしまうのであれば、それは本末転倒です。保護と社会的合意形成のバランスを丁寧にとることが必要です。
労働力として来日する外国人については、特定技能や高度人材ビザの枠組みを拡大していく方針です。これは日本が直面する構造的な労働力不足に対する現実的な対応でもあります。もちろん、来てくれるかどうかは別の問題であり、受け入れ環境の整備と文化的な共生の努力がなければ、制度だけ作っても意味はありません。制度と受け皿を並行して整備する姿勢が重要です。
戦争や災害などの有事においては、在外邦人の迅速な退避体制の整備も不可欠です。政府としては、長期滞在者だけでなく、短期旅行者や留学生も含めた退避オペレーションの計画と訓練をあらかじめ用意し、海外での安心感を支える必要があります。世界とつながる日本にとって、海外にいる日本人を守れるかどうかは国家としての基本的責任です。
最後に、二重国籍の容認については、現時点では否定的な立場を取ります。ただし、これは党首個人としての見解であり、今後党内に多様な意見が集まれば、立場が変わる可能性は十分にあると考えています。このテーマは国民的合意が不可欠であり、急ぎすぎないこともまた誠実さだと私たちは思っています。
経済・財政・産業
マクロ経済運営・財政健全化
経済全体をどう導いていくべきか──これは非常にテクニカルな領域であり、労働党としても、 現時点で自信を持って最適解を提示できるわけではありません。 それでも、いくつかの方向性だけは大事にしたいと考えています。
まず、プライマリーバランス(PB)の黒字化については、「なるべく早く」達成するべきだとは思うものの、必ずしもそれを恒久的に維持する必要はないという立場です。むしろ、日本の経済にとっていま本当に必要なのは、過度に保守的な財政規律よりも、流動性の再循環ではないかと考えています。具体的には、 裕福な高齢者の手元に滞留している資産――いわゆる“タンス預金” の動員を重視しており、税制や資産課税の工夫によって、それを市場や社会に流し直す方策を模索しています。
インフレ率や賃金上昇率に関しては、現状で法的拘束力を持つような数値目標を設けることには慎重ですが、少なくとも長期的なマクロ目標としては「見える化」しておくべきだと考えています。これにより、個人や企業が中長期の計画を立てやすくなり、不確実性の低減に貢献する可能性があります。
金融政策と政府目標の関係については、あくまで日銀の独立性を尊重する姿勢を維持したいと考えています。インフレ目標などのマクロ目標を政府が設定することには意義がありますが、それを日銀に対して「義務づける」のではなく、「提案する」構図を守るべきです。金融と財政の協調が重要である一方で、過度に一体化することにはリスクもあるという認識です。
また、財政健全化において避けて通れないのが社会保障費の自然増抑制と歳出削減です。これについては全体方針でも述べている通り、高齢者向けの支出を現行の半分程度に見直し、その分を現役世代や子ども・若者支援に振り分ける方向を目指します。ただし、これは一夜にして実現できるような話ではなく、歳出構造の点検と制度設計の不断の見直しが必要です。私たちはその努力を、今後も地道に続けていきます。
税制改革
私たち労働党は、税制を「回収のための仕組み」としてだけではなく、社会構造そのものを形づくる装置だと捉えています。だからこそ、どこから、どれだけ、どうやって取るのかをきちんと問い直す必要があると考えています。
まず消費税については、基本的に逆進性が強く、望ましい税ではないという立場です。可能な限り税率を引き下げられればよいと考えていますが、それが容易でないことも理解しています。したがって、これは数十年単位の長期的見直しが必要な課題だと認識しています。また、インボイス制度については賛成の立場です。そもそも免税事業者への簡易制度は特例的な措置であり、今回の変更は「正常化」であると考えています。ただし、インボイス制度導入によって価格転嫁の難しさが浮き彫りになっている点は重要で、これは制度の問題ではなく、発注・受注の構造的な力関係の問題として、別の対策が必要です。
法人税制に関しては、正直なところ、テクニカルな詳細には党首の力量不足も感じておりますが、現状の制度には偏りがあると考えています。日本ではむしろ「力のある大企業」への減税が手厚すぎる一方で、中小企業への支援が不十分です。私たちは、中小企業への減税を強化し、大企業向け減税を見直していく方針です。さらにいえば、大企業と中小企業の入れ替わりがきちんと起きる社会のほうが健全だと考えています。
所得課税については、明確に累進強化の立場を取ります。私たちの経済政策は、「持てる者」への懲罰ではなく、底上げによって社会全体のパイを拡大することを目指しています。そのうえで、分配の公平性を保つための課税は必要不可欠だと考えています。
最後に、資産課税についてです。ここでは特に、高齢の富裕層から、そのまま高齢の子息へと引き継がれる“死蔵資産”の存在を重く見ています。こうした資産は消費にも投資にも回らず、格差固定の温床となっている可能性があります。私たちは、 金融所得課税・相続税・固定資産税の見直しを進め、富の流動性と再分配を促す方向性を取ります。 特に相続については、格差を累積させる仕組みではなく、社会に還元される仕組みへと変えていきたいと考えています。
中小企業・スタートアップ支援
中小企業の支援について、私たち労働党は、すべての企業を無条件に支える立場ではありません。 私たちは、政府が「どの企業を存続させるか」や「どの産業が育つべきか」を選別すべきではないと考えています。重要なのは、誰もが挑戦できる環境を整えることであって、特定の企業やモデルを優遇することではありません。
たとえば、事業承継税制やM&Aの促進については、「原則として民間の問題である」とする立場を取ります。事業承継はその企業自身が解決すべき課題であり、国が深く介入するのは望ましくないと考えます。ただし、後継者がいないことで本来なら持続可能だった事業が消えるのも社会的損失であるため、贈与税など制度面での最低限の後押しにとどめる方針です。事業継続よりもむしろ、新しい企業が生まれ育つ環境の整備を優先します。
外国人起業家向けのスタートアップビザ制度については、消極的な反対の立場を取ります。制度上の不備や悪用事例が目立ち、とくに一部で犯罪利用の温床になっていることに強い懸念を抱いています。一方、従業員持株制度(ESOP)などの税制支援については、現在のところ十分な知見がなく、党としての明確な方針はこれから学び、検討を進めていく段階です。
官民ファンドのように、国家が投資対象を選別して産業を育成しようとする仕組みに対しては、はっきりと反対の立場です。私たちは、 「何が経済成長するかは誰にもわからない」 という立場に立ち、挑戦の場そのものを整備することに注力するべきと考えます。一方で、民間の寄付・財団によるスタートアップやNPO支援などは、民間の自由な資金循環として歓迎し、寄付控除などを通じた後方支援を検討したいと考えています。
下請け取引やフリーランスの問題については、価格転嫁の弱さという構造的課題を重く見ています。とくに「下請けだから仕方ない」「フリーランスだから自己責任」といった構図のもとで、不利な取引条件が常態化している点は是正すべきです。私たちは、中小企業庁の機能強化とともに、長期的には司法制度改革の一環として、下請け・契約トラブルに特化した専門の審判機関の設立を模索していきます。構造を変えることが、真に持続可能な支援になると信じています。
産業政策・GX・DX
労働党は、「国家がどの産業に投資すべきかを決める」ような産業政策には、基本的に慎重な立場を取ります。グリーントランスフォーメーション(GX)や生成AI、量子コンピュータ、半導体、電池といった分野は確かに注目されていますが、何が成功するか、何が社会に根づくかは、国家には決めきれません。
かつて日本は「第五世代コンピュータ計画」という国家主導の大型IT戦略を実施しましたが、結果は芳しくありませんでした。国家が巨額の予算を投じても、民間の流れには敵わないという事実を忘れてはなりません。私たちは、AIやGXといった“正しそうに見える未来”に過度な公的投資をするのではなく、 多様な挑戦が自然に芽吹く「土壌づくり」 にこそ力を注ぐべきだと考えます。
一方で、規制サンドボックスやデジタル特区のように、制度の側から挑戦を促す取り組みには賛成の立場です。新しい技術やサービスが「そもそも法律上できない」状態では、チャレンジの芽すら出ません。だからこそ、時限的・限定的に規制を緩和し、現実の中で実験する枠組みは、社会の柔軟性を保つ上でも有効だと考えています。私たちはこのような仕組みを、 「国が選ぶ産業支援」ではなく「誰もが挑戦できる制度支援」 として位置づけ、積極的に推進していきます。
金融・資本市場
私たち労働党は、金融政策においても「何を支えるか」よりも「どう流すか」に重きを置いています。 資金が死蔵されるのではなく、社会に循環する仕組みこそが重要だと考えています。
その観点から、NISAの恒久化・上限拡大、iDeCoの拡充には積極的な推進の立場を取ります。たとえば高齢者を中心としたタンス預金の問題は、資金が使われることなく社会に流れず、停滞を招いています。使わない貯金より、少しでも市場や将来に流れていくお金を増やすべきだと考えています。
企業統治についても、コーポレートガバナンスやスチュワードシップの強化は必須だと考えます。特に、株主が企業の意思決定に影響を持つための手段として、株主代表訴訟の簡易化・迅速化など、制度のハードルを下げる取り組みも重要です。ガバナンスは形だけではなく、実際に機能する構造でなければ意味がありません。
一方で、デジタル証券やSTO(セキュリティ・トークン・オファリング)といった新しい資金調達手段については、正直に言えば非常に難しいと感じています。ただ、現時点では「まずは保護に寄る」立場を取ります。個人投資家を食い物にするような状況が生まれないよう、過度な自由化には慎重です。
そして最後に、地域金融機関の再編や信用保証制度の見直しについては――助けてください。 正直に言えば、この領域は非常に複雑であり、今の時点で「こうあるべきだ」と言えるほどの理解には達していません。ただひとつだけ言えるのは、ゾンビ企業が延命され続けるような構造は持続可能ではないということです。もしそれが市場原理の中でFinTechなどに淘汰されるならば、それもまた一つの自然な選択肢ではないかと思います。国がどこまで触れるべきか、その境界線については、むしろ慎重に構えるべきだと考えています。
競争政策・独禁法
私たち労働党は、「市場に任せておけばいい」という考えには立ちません。 とくに、力の差があまりにも大きくなってしまった市場では、公平な競争や交渉すら成立しないからです。 だからこそ、国家は競争を守るだけでなく、「交渉する力」そのものを守るための介入が必要だと考えています。
たとえば、プラットフォーム事業者による取引慣行の問題については、もはや自主的な取り組みだけでは是正されない段階にあると認識しています。下請け事業者や出品者が圧倒的に弱い立場に置かれたまま、価格や条件の変更を一方的に強いられる構造を放置してはなりません。プラットフォーマーが「場所を貸しているだけ」と主張する場面も見られますが、取引の舞台そのものが誤解を招く設計になっていたなら、その瑕疵は提供者側にあると考えるべきです。私たちは、プラットフォームによって生じた不利益を、事業者側が一部補填する義務を負うような法律整備を検討していきます。
データ独占やアルゴリズムによる価格協調(いわゆる談合の自動化)といった問題については、非常に新しい領域でありつつも、構造的にはかつての大規模小売店舗法(大店法)と似た課題を抱えていると捉えています。つまり、市場規模・情報量・技術力の格差が、事実上の排除や操作を生み出すという構図です。私たちは、プラットフォームを“特定業種”として特別ルールで規制する大店法的アプローチを参考にしながら、デジタル時代の競争政策の再構築を進めたいと考えています。
合併審査の迅速化については、明確に賛成の立場を取ります。特にスタートアップや地域企業同士の合併・統合の際に、審査の遅れが事業チャンスや雇用維持の障壁となることが多くあります。私たちは、迅速で透明な審査プロセスを実現することで、むしろ健全な競争を支えることができると考えています。
そして最後に、公正取引委員会の機能強化については、強化すべきだという結論だけは確信しています。 ただし、どう強化すればよいのか――それはまだ、私たちにも答えがありません。専門職の待遇改善? デジタル分野の専門人材採用? 地方局の増設? いずれにせよ、強くするという意思と、まず現場の声を聞くという姿勢から始めたいと考えています。
労働・雇用・所得
労働法制・解雇規制
労働党は、「チャレンジできる社会」をつくるためには、雇用の硬直性を和らげる必要があると考えています。企業も個人も、失敗や挑戦を前提とした設計に変えていくことが、これからの時代には求められるでしょう。そのため、解雇規制の緩和とセーフティネットの強化を、セットで進めていきたいと考えています。
まず、金銭解雇制度の導入については、導入を推進する立場です。終身雇用や解雇規制は、個別の保護としては理解できるものの、社会全体としては雇用の流動性を阻害し、閉塞感を生んでいます。そこで、 一定の金銭的補償と引き換えに解雇を可能とする制度を整備することで、「安心して辞められる社会」 を構築したいと考えます。
同時に、雇用保険給付の充実は不可欠です。労働市場の流動性を高めるならば、 失業した後の生活保障や再挑戦の支援を厚くする必要があります。 給付水準や期間の見直し、非正規・フリーランスも含めた柔軟な制度拡張が必要です。その財源と負担配分についても丁寧に議論していきます。
また、有期雇用から無期雇用への転換ルールについては、制度自体の抜本的な見直しを検討します。現行の「5年ルール」は、企業側が更新を避けるなど形骸化の懸念が強く、十分に機能しているとは言えません。私たちはむしろ、有期雇用という仕組み自体の段階的な縮小を目指し、その代わりにセーフティネットを厚くして、短期雇用にも安心を持てる環境を整備していきます。
最後に、外国人技能実習制度から特定技能への転換について。 この制度の理念自体は評価していますが、現実には制度設計と運用のギャップが大きく、数多くの問題を生んでいると考えています。したがって、「技能実習制度は廃止」とする立場ではなく、理念に立ち返った運用改善と、受け入れ企業・自治体・監理団体の責任強化を通じて、より良い形に整えていく方針です。
最低賃金・同一労働同一賃金
このテーマは、とても難しいです。ですが、私たち労働党はそれでも、正直に自分たちの立場を示したいと思います。
まず、最低賃金の加重平均1000円突破時期については、あまりにも複雑で、ろくな意見が言えません。とはいえ、最低賃金のように「市場に任せていては改善されない領域」こそ、政府の出番だと考えます。よって、法律によって段階的に引き上げることには賛成の立場です。
地域間格差の是正や全国一律の議論についても、基本的には全国一律化すべきだと考えています。もちろん、一律にすれば地方経済に負担がかかるという懸念はありますが、そこは生活コストやインフラ補助などで一定程度の手当てが可能ではないかと見ています。むしろ格差を放置していい理由にはならず、「減らしていく」という思想を掲げ続けることが大切だと考えています。
非正規雇用の待遇差是正については――正直に言えば、あまり納得できていません。 「同一労働同一賃金」と言いますが、そもそも正規社員と非正規社員が「同一労働」をしている場面は、どれほどあるのでしょう? 多くの正規社員は、非正規社員の勤務シフトの調整や業務マニュアルの整備など、管理的業務を抱えています。 私たちは雇用の流動性を高めることにも賛成する立場であり、「同一労働かどうか」の線引きを巡って制度が過度に複雑化するよりも、より広い範囲で働く人の保護を実現するべきではないかと考えています。
最後に、フリーランス保護新法の運用について。 ここは非常に強く問題意識を持っています。フリーランスが労働者かどうかといった法的整理も重要ですが、それ以上に、法人による搾取的な契約や未払い行為が横行している現状が看過できません。 私たちは、法人側の行動に対し、より重い責任を求める方向性で制度設計を行いたいと考えています。 具体的には、法人の不当な取引慣行に対して刑事罰を科す可能性も含めた検討を行い、経営者自身が法令遵守の意識を持つよう誘導したいと考えています。
働き方改革(副業・テレワーク)
労働党は、「より多くの人が、自分らしい働き方に挑戦できる社会」を目指しています。 そのためには、時間や場所の柔軟性を高める制度が必要です。一方で、それに伴って生まれる責任やコスト負担の在り方も、丁寧に議論されなければなりません。
まず、フレックスタイム制の清算期間延長については、賛成の立場です。制度の本質が「柔軟な時間管理」である以上、月単位ではなく、四半期単位など長めの清算期間を設定できるようにすることは、働く人にも企業にも合理的だと考えています。
次に、残業規制・高度プロフェッショナル制度の要件緩和について。 私たちはこれにも基本的に賛成します。自由な働き方を志向するのであれば、「何時間働くか」を会社が一律に制限することには限界があります。 しかし同時に、自由には責任が伴います。健康を損ねた場合には、企業側の責任を明確に問えるようにする必要があります。自由は労働者に、責任は使用者に。このバランスを制度に落とし込むことが大切だと考えます。
一方で、リモートワークにかかる経費や労災の適用範囲については、非常に悩ましい問題です。 理屈としては当然、光熱費や通信費を企業が一部負担したり、在宅中の事故を労災認定することは妥当だと考えています。 ですが、そうした制度があまりにも整備されすぎてしまうと、安定した「サラリーマン職」に人が集まりすぎてしまい、チャレンジする人が減るのではないかという懸念もあります。 このため、私たち労働党としては「全否定はしないが、慎重な導入を求めたい」という立場を取ります。
最後に、週休3日制の普及策について。 これはもう、素直に「休もうよ」と言いたいです。 もちろん、週休3日がすべての職場に適用できるわけではありません。ですが、効率やアウトプットで評価する文化への移行とともに、まずは選択肢としての普及を進めたいと考えています。 「全員が週5日間、満員電車で通勤する」という社会モデルは、そろそろ見直していい頃かもしれません。
賃上げ・所得再分配
この分野には、たしかに魅力的な政策提案が多くあります。ですが労働党としては、「できること」「やるべきこと」に線を引きながら、シンプルでわかりやすく、かつ公正な制度を目指したいと考えています。
まず、公共調達や補助金の支給に賃上げ要件を組み込む案については、反対の立場を取ります。 なぜなら、公金支出に関する条件は常にシンプルであるべきだと考えているからです。 複雑な条件付けは不透明さや恣意性につながりかねません。もちろん、賃上げをした企業に対する別途の優遇措置の検討には前向きですが、それは条件ではなく「後からの報奨」であるべきだと考えます。
次に、物価連動型の賃金交渉について。 これは国政政党の出る幕ではなく、労働組合の役割だと考えています。 近年、労組の影響力が低下しているのはたしかですが、それを国が肩代わりすることが正解なのかどうかは疑問です。労組には、ぜひもう一度力を取り戻してほしい。 私たちはその活動を邪魔せず、支える側に回りたいと思っています。
ベーシックインカムと給付付き税額控除の議論については、慎重な立場です。 特にベーシックインカムについては、「一律配布」であるがゆえに、本来支援が必要な層への支援が薄まりかねないという危惧を強く抱いています。 むしろ、給付付き税額控除の方が合理的であり、資産課税と連動させるかたちで導入を検討する余地があると考えています。
最後に、退職所得課税と年金との連携について。 正直に言えば、「とても難しい」というのが率直な感想です。 ただし、「一定以上の退職金には段階的な課税強化を」という方向性は模索したいと考えています。 一部の高額な退職金に対しては、富の偏在を是正する観点から、課税強化を視野に入れて議論を進めたいと思います。
労働組合・労政三者構成
労働党は、「守られながら、自由に働ける社会」を実現するためには、労働組合や労政審議会といった三者構成の仕組みが、もっと強く機能しなければならないと考えています。ですが、現状はかなり形骸化しているように見えます。 私たちは、この仕組みを立て直すために、以下のような取り組みを進めたいと考えます。
まず、勤務間インターバル制度の義務化については、強く推進します。 「一時的な長時間労働」はともかく、常態化しているのはもはや“健康破壊”でしかない。 そして、この規制に「業種別の例外」など設けるつもりはありません。 政治家・役人を含むすべての職種で、しっかりと休みを取る。それが当たり前の社会をつくりたいと考えています。
次に、非正規雇用者の労組組織率を高める取り組みについて。 これも強く応援したいです。ただ、正直に言えば、制度的にどこまでやれるかは分かりません。 国家が労組を強制的に組織させるわけにもいきませんし、最終的にはやはり労組自身が魅力的であること、信頼されることが必要でしょう。 それでも、制度上の障害を取り除き、環境整備を進める努力は続けたいと考えています。
また、労使協定(36協定など)のデジタル化については、これは進めます。 紙に判子では、いつまでも変わらない。 ただし、労組が対応できていない問題について、国家が支援する義務までは負わないというのが私たちの立場です。労使自治である以上、その責任も持っていただきたいと考えています。
最後に、労働委員会の権限強化について。 これもぜひ進めたいとは思っています。ですが――どうやればいいか分かりません。 人員増?予算措置?制度改正? 他にもやるべきことは多いと思いますが、具体策については知恵を貸してくれる仲間を募集しています。 ぜひ、実務に明るい方に党の議論に加わっていただきたいです。
社会保障・人口政策
医療制度・診療報酬
医療政策は専門性が高く、素人の党首が語るにはあまりに荷が重いのが正直なところです。それでも社会保障費全体を見直そうという立場に立つ以上、医療制度にも向き合わねばなりません。診療報酬については基本的にはプラス改定を望みますが、予算は減らしたいという、非常にわがままな立場からの議論になります。過酷な現場に正当な対価をという思いと、制度全体としての持続性をどう確保するかとの板挟みのなかで、苦しい選択を迫られています。
医師の偏在問題や過疎地医療の担い手不足の解決策として、オンライン診療の拡充を進めたいと考えています。もちろん万能ではありません。初診や生活習慣病の管理、家庭医的な領域など、オンラインで十分に対応できる範囲から冷静に検討を始める必要があります。特に、対面診療でしか得られない直感的な観察や判断が失われることへの懸念は残り続けるでしょう。
認知症対策や地域包括ケアについては、一定程度の居住の自由を制約する方向も検討します。「まとまって暮らす」ことによるケアの効率化やリスクの低減は、これからの超高齢社会に必要な発想かもしれません。ただし制度設計や当事者の尊厳への配慮など、慎重さも求められます。医薬品供給網の安定化については、もはや一刻を争う課題だと認識していますが、具体策を出せる段階には至っていません。率直にいえば「どうしたらいいのか分からない」問題ですが、少なくともこの課題から目を逸らさない姿勢を示します。
年金制度改革
年金制度は、あまりにも制度が複雑で、正直に言えば現時点で納得感のある制度改革案を提示できる自信はありません。全体方針としては、「リタイア後10年程度で使い切る」ことを前提とした制度設計を行うべきではないかと考えています。長寿化する中で、すべての人が90歳、100歳まで安定した生活を保障される制度を維持するのは、現実的にかなり困難です。だからこそ、誰もが納得できる「引き際」のモデルを考えるべき時期に来ているのではないでしょうか。
マクロ経済スライドの見直しや基礎年金の税方式化については、完全に制度論であり、制度設計のプロである厚労省にある程度の信頼を寄せるしかありません。党首自身は不勉強で、これらに独自の見解を持ち合わせていません。制度維持の難しさを認識しつつも、「現時点では現状維持を支持する」という保守的なスタンスに立ちます。
在職老齢年金制度や厚生年金の適用範囲の見直しについても、制度詳細の理解が及んでおらず、意見表明は控えます。ただ、働ける高齢者には可能な限り働いてほしいという思いはあります。個人型DC(企業型確定拠出年金)の受給柔軟化については、働き方が多様化するなかで制度の自由度を高める方向性には賛成します。
介護・福祉
介護や福祉の現場は、まさに「人の力」で支えられており、その報酬水準はもっと上げるべきだと考えています。介護報酬や障害福祉サービスの報酬加算は恒久化し、段階的に引き上げていく方向で進めたいと考えます。ただし、ここで必ず問われるのが「財源はどこから?」です。正直に言って、今の国の予算構造ではすぐには難しい。そのため、一時的には利用者負担の見直しをお願いせざるを得ないという苦しい立場を取らざるをえません。
外国人介護人材の受け入れ枠拡大については、方向性としては大いに賛成です。労働力不足が深刻であり、海外からの支援を受け入れることは日本の介護制度を維持する上で不可欠な要素です。ただし、現場での文化的・制度的な受け入れ態勢はまだ十分とは言えず、制度側のサポートを丁寧に進めていく必要があります。
グループホームや地域密着型サービスの整備も進めていきたい方針ですが、ここでも壁となるのは財源です。尊厳ある「住み慣れた地域での暮らし」は守りたい。一方で、個別対応を続けていくには限界があるという現場の悲鳴にも耳を傾けたい。よって、ある程度「まとまって暮らす」ことの容認を求める、そんな政策転換を提案していきます。
子育て・少子化対策
労働党は、 「年収300万円でも子育てできる社会」 を重点政策として掲げています。そのためには、単なる小手先の手当ではなく、予算を“倍増”する覚悟が必要です。これまで「子どもは家庭の責任」とされてきた日本の構造を見直し、「社会が育てる」方向へ大胆に舵を切ります。
まず、児童手当の所得制限撤廃と支給額増額は当然として、出産費用ゼロの実現に向けて出産育児一時金の直接支払い制度を整備し、出産時に手元資金がなくても安心して産める体制をつくります。さらに、こども誰でも通園制度の拡充により、働く親の就労要件に左右されず、すべての子どもが保育の対象となる社会を目指します。保育士の処遇改善も一体的に進め、質の高い保育と働きがいのある現場の両立を目指します。
また、不妊治療への公的支援を継続・拡充し、子どもを望む家庭を経済的にも制度的にも支えることに加え、特別養子縁組や里親制度など社会的養護の強化にも注力します。どんな環境に生まれても、すべての子どもが温かい家庭と地域の中で育てられるよう、持続可能な支援体制を築きます。
障害者福祉
障害者福祉において、労働党は「自立して働ける社会」の実現を基本理念に掲げつつ、現実的な移行段階を慎重に見極めながら政策の展開を図ります。障害者差別解消法の民間事業者への義務化については、まだ社会的認知や議論の成熟が十分でないと判断しており、直近5年程度は現状維持とします。ただし、方向性としては支持しており、長期的には義務化を目指すための普及啓発を段階的に進めていきます。
就労支援A・B型の工賃については、引き上げに賛成する立場です。最低賃金との乖離が問題視されて久しく、また、「稼ぐ経験」自体が尊厳と自己決定を支える要素であるという点からも、制度的な見直しが必要と考えます。働く意欲があるにも関わらず、その機会や対価が著しく制限される現状は、労働党の理念と反するため、支援水準の底上げを目指します。
多機能型拠点や地域移行支援については、困難の多様化に伴い支援組織が細分化されている現状に懸念を持っています。例えば、ホームレス支援、女性ホームレス支援、若年貧困女性支援などがそれぞれ別団体として存在し、事務コストや会計負担が増大しています。今後は、統廃合を促すことでスケールメリットを活かし、資源の集中と現場の実効性を高める方向を模索します。
「心のバリアフリー」認定制度については、制度自体の認知が不十分であり、その有効性を評価する段階にも至っていないと認識しています。まずは支援者・福祉現場への周知・研修等を通じて制度への理解を促進し、ゆくゆくは日常的な接点の中で“空気”のように根付く共生意識の醸成を目指します。
生活保護・セーフティネット
労働党は、生活保護を単なる救済策ではなく、「再挑戦への出発点」として再定義します。住宅扶助・医療扶助の水準は現行より引き上げを目指し、健康的な生活と社会参加が可能な基盤を整備します。同時に、受給者が将来的に自立し、チャレンジャーとして社会に戻ることを支援する枠組みづくりにも注力します。労働党の経済政策の核は「下支えによる全体の底上げ」であり、生活保護制度はその最前線に位置づけられます。
生活困窮者自立支援制度については、既存制度の統合と効率化を推進します。個々人の困難が多様であることは認識しつつも、支援制度の乱立はかえって利用のハードルを上げるため、なるべくシンプルで網羅的な制度に再編していく方向です。新たな制度創設には慎重であり、今ある制度の改善と周知徹底が優先されるべきだと考えます。
また、フードバンクや居住支援法人への支援も積極的に検討しますが、これは本来行政が担うべき役割であるとの立場です。よって、必要な支援は行いつつも、将来的には官による統合と再編を視野に入れています。
最後に、マイナンバーの活用による給付の迅速化を推進します。ただし、プライバシーとのバランスには細心の注意を払い、支援が必要な段階では金融情報との連携を認めつつ、不要になった際には情報提供を停止できる「オプトアウト制度」の整備を並行して進める方針です。
教育・科学・文化
幼保一体化・義務教育
労働党は、幼児教育の無償化をさらに進め、所得制限の撤廃を目指します。ただし、これは同時に検討中の「高齢者補助の半減による財源確保」とセットで進む政策であるため、段階的な導入になることを理解していただきたいと考えます。また、幼稚園・保育園・こども園といった制度の違いは保護者への説明・選択負担を生んでおり、これらを「こども支援センター」などに統合していく方向性で制度改革を進めます。
GIGAスクール構想第2期については、「1人1台端末」体制の更新を国が責任をもって進めます。教育現場のICT環境整備は、現代における基礎インフラであり、単なる端末提供ではなく、ネットワーク環境や教員研修も含めた包括的な対応が求められます。
教員免許更新制の廃止を受けて、今後は教員の自主的かつ継続的な研修機会の整備が重要です。労働党は、まず教育委員会職員に対する研修や全国的な人材交流を促進し、現場の指導層が教育のアップデートに積極的に取り組む体制を整備します。教員が孤立せず、地域を超えてつながれる仕組みづくりを支援します。
最後に、学校給食費の無償化も進めていきます。これは教育の一部であるという認識のもと、全児童に共通する最低限の保障として位置づけます。財源については高齢者医療費の見直しの中からねん出し、子どもに向けた再配分を強化していきます。
高等教育・大学改革
労働党は、大学授業料の負担軽減と新たな支援スキームの確立に取り組みます。特に注目しているのが「授業料後払い」制度、いわゆるISA(Income Share Agreement)や出世払い方式の導入です。卒業後の所得に応じた返済や、一定年収を超えた段階での返済を条件とするなど、学生に過度なリスクを負わせない仕組みが必要です。また、将来的には複数の大学が連携する「教育ファンド」の創設も検討し、大学間連帯による社会的投資の枠組みを構築したいと考えています。
大学改革の中核には、研究大学法人制度の整備と、そのガバナンス強化が求められます。教員のクロスアポイントメント(複数所属)や副業解禁などにより、大学人材の流動性を高め、より柔軟で開かれた研究体制を目指します。これは、民間企業や自治体との連携を促進するうえでも有効な改革です。
また、大学ファンド(10兆円規模)の運用と分配については、その公平性・透明性の確保が不可欠です。評価指標や配分ルールが不明瞭であれば、研究現場に歪みが生じる可能性があります。労働党はこの点に関して、政府から独立した第三者的立場を持つ機関、たとえば日本学術会議などに対し、客観的な意見表明や助言を依頼することも視野に入れています。学術会議の信頼回復と活用、そしてその役割の再定義も、大学改革の一環として再検討していきます。
生涯学習・リカレント
労働党は、生涯学習の促進と、社会人の学び直しを支援するリカレント教育の重要性を強く認識しています。一方で、現在進行中の「リスキリング給付制度(雇調金転用)」については、その実効性に懸念があります。再教育された人材が、果たして実際に関連する職に就いているのか。そのトラッキングと検証が不十分なまま制度が拡大されているのではないかという疑問が拭えません。制度の継続・拡充には、実績と成果の透明な検証が必要です。
産業界との共同教育プログラムに関しては、その理念には理解を示しつつも、実態との乖離を懸念します。高度化したスキルセットを前提としたカリキュラムが多く、すべての受講者にとって現実的な学びの場となっているかは疑問です。例えばJABEE(ジャビー)など、評価制度としては機能しているものの、果たして多くの学生がその水準に到達できているのか。さらには、それを大学教育の役割とする妥当性も再考されるべきです。
一方で、オープンオンライン講座(MOOCs等)への公的補助については強く推進していきます。誰もが時間や場所にとらわれず学べる環境の整備は、生涯学習社会の基盤です。また、公民館・図書館といった地域の学びの場の整備やデジタル化も強く後押しします。これらは高齢者の学習支援や、若者の地域活動・居場所づくりにも貢献します。公民館での部活動や、自習のための開放も歓迎されるべきでしょう。生涯学習は「余暇の贅沢」ではなく、社会の健全性を保つための基盤と捉えています。
研究開発投資・イノベーション政策
研究開発の方向性や予算配分においては、政治の側から細かく口を出すよりも、まずアカデミアがもっとわかりやすく、積極的に意見を発信すべきだと労働党は考えます。Moonshot、SIP、SBIRといった国家主導の研究プロジェクトや制度は、確かに存在感を増していますが、肝心の学生すらその内容を知らない。関東大会に出る高校が垂れ幕を掲げるように、大学も研究成果にもっと誇りを持ち、外に見せる努力をしてほしいのです。
国が支援すれば書類が増える——この構造は多くの研究者にとってストレスです。研究の本質は、何が成功するか誰にもわからない領域への挑戦にあり、官製の支援枠組みは時としてその自由な探求を狭めます。だからこそ、自治の精神が重要です。産学連携(TLOや共創拠点)、研究者の流動性やテニュア制度なども、まずは学術界が主導して制度設計を試みるべきだと考えます。労働党は、それを後押しする立場から最小限の関与にとどめます。
ただし、すべてを放任するわけではありません。とりわけ、次世代原発や核廃棄物処理といったテーマに関しては、国家の責任として積極的に技術開発を進めるべき領域だと考えています。これらは市場任せにはできない「未来の責任」の領域であり、政府調達による支援も視野に入れて議論を進めます。
文化芸術・スポーツ振興
文化や芸術は本質的に多様であり、その価値の評価は一様ではありません。ゆえに「保護すべき文化」とそうでないものの線引きは難しく、国家が積極的に判断する領域ではないと労働党は考えます。一方で、公演・展示の機会やインフラ面での支援はチャレンジの裾野を広げるという意味で重要であり、復興基金の恒久化についても、制度設計次第では検討の余地があります。大切なのは、「すでに評価されているものをさらに手厚く保護する」のではなく、「挑戦の初期段階を後押しする」という視点です。
eスポーツについては、既存のスポーツ文化と同様に制度的な認知が必要だと考えます。とくに賞金制度の整備やプレイヤーの法的位置づけ、著作権との関係整理など、制度面の課題は山積しています。また、もし過度な規制によりeスポーツ業界が地下化し、オンラインカジノなどと結びつくようであれば、むしろ公的なスキームで明確なルールのもと支える方が健全です。
公立文化施設の運営やスポーツくじの収益分配なども、一律の処方箋ではなく、制度の「柔軟さ」が求められます。札幌ドームのような例に見られるように、公営運営は硬直化しがちで、かといって民営化には撤退リスクがつきまとう。よって、制度上、運営主体の切り替えや試行錯誤が可能となるよう、評価・手続き・ガバナンスの設計を見直すべきです。地域クラブの育成については、可能な限り多様なチャレンジを支える方向性で、地域の意志を尊重した制度整備を進めたいと考えています。
環境・エネルギー
気候変動対策・カーボンニュートラル
労働党は、気候変動への対応を「生活対策の延長線上」に位置づけます。2030年削減目標については、国際的な約束として最大限尊重しつつも、現実的な生活支援や経済活動への影響を見極め、無理のない形で取り組むべきと考えます。日本では、家庭よりも火力発電や工場の対策の方が効果が大きいため、これらへの補助や更新支援に重点を置くべきです。原発推進については別途議論が必要ですが、工場設備の更新や再エネの導入など、淡々と課題をこなす姿勢を重視します。
国境炭素調整措置(CBAM)や排出量取引制度(ETS)、グリーンクレジットといった仕組みについては、党首の力量では技術的な詳細に言及できませんが、将来的にグリーンクレジット輸出で外貨を稼げる国になれればという目標は持っています。そのための制度整備については、専門家の知見を積極的に取り入れていきたいと考えています。
ネイチャーポジティブ国家戦略については、日本社会の自然観に照らして、むしろ「放任による保全」を重視すべきと考えます。日本には自然が人間の営みを飲み込む強さがあり、それを畏れ敬う文化があります。したがって、無秩序な開発による破壊を防ぐ一方で、自然と人の領域を明確に線引きし、手を入れすぎないこともまた自然保護の一形態であると捉えています。憲法前文にも掲げた「自然への敬意」に則り、調和を軸に据えた環境政策を模索していきます。
再エネ・蓄電池普及
労働党は、再生可能エネルギーの導入を否定するものではありませんが、あくまで「生活インフラの一部」として、現実的で持続可能な形での普及を目指します。再エネの導入支援制度であるFIT(固定価格買取制度)からFIP(市場連動型)への移行については、原則として自由市場に寄せていく方向を支持します。とはいえ、ネガティブプライス(電気が余って価格がマイナスになる状態)など技術的・制度的な課題が多く、現時点では「撤廃を目指すが課題山積」と認識しています。
洋上風力発電の長期入札制度などについては知見が不足しており、党内での専門的な検討体制が求められる分野です。現状では政府主導の動きに依存せざるを得ませんが、経済産業省の方針に盲目的に従うのではなく、市民生活や地域経済との整合性を重視した観点から、丁寧なウォッチと必要に応じた提言を行っていく方針です。
また、V2G(Vehicle to Grid)や分散型電源の系統接続についても同様で、技術革新の進展に追いつけていないのが正直な状況です。理想的には自治体・住民と電力網を結びつける社会を支援したいという思いはありますが、現実には制度やコスト面の整理が先行しており、行政への依存度が高い分野であると認識しています。
一方、蓄電池リサイクルについては、比較的明確な方針を持っており、市場任せでは回らないと判断しています。製造者責任の明確化とともに、一定の義務付け(回収義務・再資源化義務など)を検討し、循環経済の一環として制度設計を進めるべきだと考えています。
原子力政策
原子力政策は、脱炭素やエネルギー安全保障における中核的課題でありながら、技術的・制度的・社会的に極めて困難な選択が迫られる分野です。電源ミックスにおける役割、カーボンニュートラル実現への貢献可能性、事故やテロのリスク、運転期間の延長とその規制、そして高レベル放射性廃棄物の再処理・最終処分・中間貯蔵など、多数の難題が積み上がっています。さらに、廃炉費用、保険制度、賠償スキーム、地域雇用や経済影響、規制とガバナンス体制、そして小型モジュール炉(SMR)のような未来技術に投資すべきかといった論点も複雑に絡み合っています。
労働党としては、特に「再処理・最終処分・中間貯蔵地問題」の未解決性に注目しており、これらに対し年単位のロードマップを国が責任をもって提示し、法的なマイルストーンの設定によって進捗の担保を図るべきと考えます。その際、立法と行政だけでなく 司法の協力(調停・審判の迅速化) も不可欠であるとの立場です。これにより、「動かせない」「進まない」状態からの脱却を図ります。
また、事故リスクや廃炉・賠償・保険などのコストについては、一基一基の状況に応じた丁寧な分析と計画策定が必要ですが、最低限、初期の段階で廃炉・事故時費用などを定量的に算出し、開示しておくことは義務付けるべきです。これにより、原発の運転コストの「見えない外部性」が減少し、再エネ等との公正な比較が可能になります。
原子力規制委員会は独立性の確保が絶対条件です。そのための制度面の整備や政治からの干渉防止はもちろんですが、最大の課題は専門人材の確保です。ここは政府・学界・業界が連携し、人材育成や流動性のあるキャリアパス構築を進めなければ、技術的信頼性そのものが揺らぎます。
労働党としては、 原子力進めるという立場です 。しかし、未来への責任を果たす設計・処理・制度づくりが前提であり、進めるにしても、止めるにしても、覚悟が必要です。
資源循環・プラ削減
労働党は資源循環やプラスチック削減について、個別技術の是非に深入りするのではなく、自治・誘導・実験の三原則を重視する立場を取ります。
プラスチック資源循環促進法(いわゆるプラスチック新法)の対象拡大については、これまでの与野党の議論があまりにも複雑化しており、技術と制度の両面で調整が難しいため、現時点で積極的には触れない方針をとります。一方で、ペットボトルの水平リサイクルについては、その重要性を認めつつも、現状では技術的に確立しているとは言えず、課題が多く残されていると認識しています。将来的にリサイクル効率を高めるためには、デポジット制度の導入など、飲料メーカーに直接的なインセンティブを与える仕組みが必要ではないかと考えています。
食品ロス削減・賞味期限表示の見直しについては、日付表示の細かさは製品ごとに適切性が異なるため、制度側の統一的な変更には慎重です。その代わりに、流通・外食業界に対して自主的な改善努力(自治)をまず求めたいと考えています。国の介入はあくまでその後段階であるべきです。
最後に、都市鉱山のリサイクルは、レアメタルの安定供給と循環経済の要です。ここはむしろ積極的に支援すべき領域であり、特区方式での実証実験(法制度・資金支援含む)を実施し、効果を検証していきたいと考えます。資源がない日本にとって、これは数少ない希望のある分野だと考えています。
生物多様性保全
労働党は、生物多様性保全を 「人間の管理対象」として扱うことへの違和感 を明確に表明しつつも、実際の施策には国際的責任を果たす姿勢で臨みます。
まず、30by30目標(2030年までに国土の30%を保全)については、理念には一定の理解を示しつつも、「人間が自然を保全する」という発想そのものが西洋的な上から目線であり、本来的には自然に委ねるべきとの立場です。現実には、すでに国土の20%超が保護指定されており、未カウントの 里山や天然林(残りの森林約60%) を政策的に保全対象に組み入れることで、30%達成を目指します。ただし、あくまで「保護」ではなく「放任に近い形」で自然と共存する道を選びます。
外来種対策と遺伝資源アクセスについては、既存の政策の延長上でしっかり対応します。すでに方向性は明確であり、国際的な枠組みの中で粛々と進めます。
森林経営管理制度の普及については、所有者不明・境界未確定・管理困難な森林が増加する現状を踏まえ、「選択と集中」が避けられないと認識します。森林の現実的な維持には、もはや放置ではなく戦略的な縮小管理(縮森林化)が必要です。この点においては、政党や省庁の枠を超えた政官業連携による本格的な制度改革が必要であり、その調整こそが政治の責任だと考えています。
最後に、生態系サービスの経済評価については、今後のチャレンジとして積極的に導入していく方針です。これは労働党が憲法観として掲げる 「自然への敬意」 を、経済の言葉で表現するひとつの手段と捉え、関連学会との連携により段階的に進めます。経済と環境を分断せず、複雑な価値を複雑なまま評価する試みとして支援していきます。
農林水産・食料
農業政策・戸別所得補償
農業政策の根幹にある水田農業直接支払交付金については、制度設計の難易度が非常に高く、単価見直しをめぐる議論は極めて繊細です。そもそも市場がうまく機能していないため、交付金によって農家の所得を補償せざるを得ない構造となっています。背景には、大規模資本による農業参入が制限されてきた歴史や、個別農家の高齢化という構造的問題もあり、農業が労働の選択肢として持続可能でなくなりつつある現状があります。高齢農家が自家用車に頼って生活することが免許返納の妨げになっているとすれば、これは農政だけでなく交通政策や高齢者福祉とも交差する課題です。
労働党は、こうした実情をふまえ、今後は徐々に農業分野への資本参入を容認する方向へ政策を転換するべきだと考えています。さらに、米という作物については、水や電気と同じくインフラとしての性質を認め、政府が直接的に生産・供給体制の研究に乗り出すべきではないかと模索を始めたいと考えています。
農地バンクや所有者不明農地対策についても、制度の利用率が伸び悩んでいる要因として、縦割り行政の弊害を想定しています。本来であれば、福祉分野で支援を受ける人々や、再チャレンジを模索する人々がアクセスできるチャンスの場となる可能性もあります。そのため、制度の運用主体をデジタル庁へと委ね、農林水産省・厚労省・総務省などとの横断的な省庁連携を設計し直す必要があると考えています。
農業保険の適用拡大については、現場の声や実際の加入状況の把握なくしては軽々しく政策判断できるものではないと考えています。党首である私自身、この分野に関しては勉強不足であり、より多くの当事者からのヒアリングを通じて、どのようなニーズがあるのかを丁寧に確認していきたいと思います。
スマート農業・6次産業化
スマート農業を推進するにあたって、自動走行トラクターや農業用ドローンの導入補助は既に進められている政策ですが、これらを単なる機械導入に終わらせないためにも、信金やJAといった地域金融機関との連携を重視する必要があります。資金調達や導入後の運用支援、技術研修など、農家の経営基盤を総合的に支える体制づくりが重要です。スマート農機の導入が“使いこなせない補助事業”で終わらないよう、現場主導の伴走支援体制が求められます。
また、アグリテックベンチャーへの投資については、特区のような枠組みを通じて地域ごとに実験的かつ挑戦的な農業の形を模索し、次世代農業の育成に取り組みたいと考えています。地域資源の有効活用や、人材流入といった波及効果も狙えることから、国家プロジェクトとしての機運を高めていくべき分野です。
地理的表示(GI)保護制度の整備と輸出促進については、技術的・国際的に複雑な論点を多く含み、現時点では有効な提案を出しにくい状況です。ただ、地域ブランドの保護と活用は中長期的に重要な柱となるため、有識者の協力を得ながら、粘り強く検討を進めていくつもりです。
農産物の加工や直売所の展開に対する税制優遇措置についても、基本的には推進の立場です。ただし、これを中央主導で画一的に実施するのではなく、地方自治体による地域産業振興策の一環として支援するスタンスを取りたいと考えています。具体的には、地方交付税の拡充や特定事業に対するインセンティブ設計など、自治体裁量の中で柔軟に活用できる制度設計が望ましいと考えています。
林業・山村振興
林業・山村振興の分野は、いずれの政策課題も「担い手不足」という根本的な構造課題に突き当たります。木材自給率の向上やCLT(直交集成板)建築の普及、中山間地域の路網整備、さらには狩猟者確保と鳥獣被害対策など、それぞれが重要でありながらも、現場を支える人材の高齢化と不足が深刻化しています。これらの課題に対しては、もはや各自治体を交えた「選択と集中」が不可欠であり、国としては各地域の実情に応じた計画の策定と、期限を設けた実行ロードマップの提示を求めていきます。
一方で、森林環境税・交付金の使途拡大については、各自治体がその地域の山林や産業構造に応じて柔軟に使えるよう、あくまで「現場に委ねる」姿勢を重視します。中央からの画一的な口出しよりも、自治体ごとの創意工夫に期待し、交付金の使途についても丁寧な報告・共有の仕組みをつくることで、自治と説明責任のバランスを取りたいと考えています。
そのうえで、国としては「全体最適」ではなく、「部分最適の集合」による林業再生を目指すべきと考えており、地方の自立的な取り組みを支援する柔軟な制度設計に注力していく方針です。
水産資源管理・漁業振興
水産資源管理においては、TAC(漁獲可能量)制度やIUU(違法・無報告・無規制)漁業対策といった枠組みが国際社会からの信頼に直結する重要な課題です。一方で、近隣諸国の遵守状況も不透明であり、国内のみが厳格にルールを守っても実効性が損なわれかねないという現実もあります。そのため、まずは国内におけるモニタリング体制の高度化と透明性確保を進め、国際社会への説明責任を果たせる土台を整えることが先決だと考えます。
また、漁業者への燃油高騰支援については、国としては恒常的な制度整備の範疇を超えると判断し、地方自治体の判断と支援に委ねたいという立場です。短期的な経済支援に国家予算を充てるのではなく、中長期的な構造転換の支援に重点を置くべきと考えています。
水産加工・物流のコールドチェーン整備や養殖業のスマート化・代替飼料導入などについても、国主導のトップダウン型支援ではなく、地域産業の発展という観点から、地方自治体と現場の主体性を重視し、財政支援や規制緩和といった「後押し」に徹する方針です。技術的な詳細や運用については、農政や民間の知見を取り入れた分野別協議の場を設けるなど、柔軟に対応していきたいと考えています。
食料安全保障・フードロス
食料安全保障において、労働党は「食べなければ人は死ぬ」という極めて現実的な観点から、食料を水と同様のインフラと位置付けています。そのため、食料自給率向上の目標(KPI)に関しては、無闇に幅広い品目を対象にするのではなく、本当に生存に不可欠な2〜3種に絞って国家が安定供給できる体制の検討を進めます。これは「飢餓を防ぐ」という根本的な人間の安全保障の観点からも、当然の帰結だと考えています。
戦略的備蓄や緊急時の生産支援についても、同じ立場から国による強い関与を支持します。市場や物流の混乱時に備えた制度的・物理的備えが欠かせず、一定の公的備蓄を保ちつつ、農業者や生産設備のサポート体制を整備することで、「いざ」という時に速やかな生産転換が可能な仕組みを追求します。
一方、学校給食や福祉施設への地産地消の促進、ならびにフードバンクへの税制優遇といった分野については、国政ではなく自治体の判断や地域の主体性に委ねるべきものと考えています。食の支援と連携の在り方は、地域の状況に応じて柔軟に設計されるべきであり、国家が細かく関与するべきものではありません。国はむしろ、地方交付税や制度設計の柔軟化といった側面での後方支援に徹する立場を取ります。
都市・国土・インフラ
国土形成計画・コンパクトシティ
労働党は、東京への一極集中を是正し、都市機能を地方へ分散させる「多極分散型国土」の構築を志向しています。象徴的なプロジェクトとして「東北工程」を掲げ、放射状ネットワークではなく、都市間ネットワークによる自律的な衛星都市群の形成を構想しています。リニア中央新幹線を核とするメガリージョン構想にも一定の関心はあるものの、計画の進捗が不透明な現状では現実的な優先順位は低く、まずは地方議会の小委員会レベルから分権を進める実践を検討しています。
都市計画法や用途地域の見直しについては、現行制度の堅牢性を尊重しつつも、時代に応じた漸進的な改正を重視します。制度疲労を起こしている部分もある一方で、大胆な制度変更は混乱を招く恐れがあるため、あらかじめ「定期的な見直し」を制度に組み込むというアプローチを採ることで、慎重かつ持続的な変革を目指します。
公共施設の再配置やアセットマネジメントについては、党として明確な知見が不足しており、まずは学術会議など専門家コミュニティに提言を求めたい方針です。とはいえ、その成果に対しても政治的な説明責任を果たす覚悟があり、必要があれば厳しく評価する姿勢も持っています。
また、急増する空き家問題に対しては、「所有者不明土地の国庫帰属」といった強制措置も視野に入れ、将来的な開発や再配置に向けた用地確保を提案します。もちろん財産権とのバランスが問われるため、後日請求への補償制度を整備する必要がありますが、地域の縮小に備えて「まとまった土地を引き渡しやすくする制度設計」が求められると考えています。
交通インフラ
労働党は、交通インフラについて国家全体のネットワーク性を重視し、特に地方鉄道や新幹線などの公共性の高い鉄道網を支える方向で方針を固めています。高速道路の無償化案については、その魅力を認めつつも、既に進められてきたNEXCOの民営化方針と矛盾することや、安定財源の問題から反対の立場をとります。むしろ現行の有料制度を前提にした維持・更新戦略を丁寧に積み上げるべきと考えます。
リニア中央新幹線や整備新幹線については、基本的に鉄道インフラの強化を支持する立場から賛成方針ではあるものの、現実とのギャップが大きく、現段階では見直しと再検討が必要だと考えます。とりわけ費用負担の在り方や沿線自治体との調整、技術的課題については、十分な説明責任が果たされるまでは拙速に推し進めるべきではないと考えます。
地方鉄道の再編については、上下分離方式によって民間運営者の負担を軽減しつつ、公共交通としての鉄道網は国家の意思として維持していく立場です。特にBRT(バス高速輸送システム)への転換は、利便性や費用対効果の観点から地域ごとに検討し、場合によっては補助金の活用も視野に入れるとしています。
空港や港湾の経営権民営化については、現時点で労働党として明確な立場を取っておらず、特に港湾に関しては政策的な知見と議論の蓄積が不十分であるとの判断から、「与党となった後に慎重に検討する」との保留的姿勢を示しています。
住宅・土地政策
労働党は住宅政策において、特に要配慮者や地方都市部での居住支援を重視しています。住宅セーフティネット法の2025年10月改正の効果を見極めつつ、それでも住宅確保が困難な人々には、コンパクトシティ化を通じた地方誘導や住環境の集中整備を進めていく方針です。青森市の取り組みのような先行事例を参考に、地域の空き家活用と支援制度の接続を模索したいとしています。
一方、賃貸住宅の敷金や家賃保証の改革については、私的資産である「住宅」という性質や、大家側のリスク回避傾向が強い現状を踏まえ、「非常に難しい課題」として慎重な立場をとっています。政策介入の余地は限られているとしつつも、今後の議論の深化に期待する姿勢です。
土地政策では、所有者不明土地や放棄された分譲地の増加に対応すべく、「連絡不能な土地は国庫に帰属させる」など、現行の財産権保護一辺倒からの転換が必要と訴えます。特に固定資産税の滞納が続く土地などから優先的に押さえ、将来的な土地の集約・再活用へとつなげる制度設計を検討します。
なお、住宅ローン減税の見直しについては「しない」と明言し、現行制度の維持を基本とする姿勢を明確に打ち出しています。これは中間層向けの住宅取得支援として依然として有効な制度と位置付けているためです。
防災・減災・国土強靱化
首都直下地震および南海トラフ地震に対する政府・自治体のBCP(事業継続計画)は一定程度整備され、主要機関による訓練も継続されていますが、それが国民に広く共有されているかというと、まだ不十分です。労働党としては、BCPの透明性と実効性を高めるために、全国規模での大規模訓練を2〜3年に一度実施することを提案します。これは閣僚・自治体首長・インフラ企業・民間企業も巻き込んだ「全国BCP総合演習」として、情報共有・指揮系統・市民の避難行動に至るまで一連の流れを演習・検証するものであり、防災意識の醸成にも資すると考えます。
浸水想定区域における建築規制については、現時点で規制強化には踏み込まず、ハザードマップの活用と個人判断による選択を尊重する立場です。ただし、情報提供やリスク開示の徹底を前提とします。また、インフラの老朽化と予防投資については、財源の制約が大きいことを率直に認めた上で、自治体の優先順位に応じた柔軟な支援を模索します。住民による自助・共助訓練は非常に重要と考え、地方自治体による取り組みを支援する補助制度の拡充に取り組みたいと考えています。
スマートシティ
労働党はスマートシティ構想について、国家主導ではなく自治体や民間主導の取り組みを尊重しつつ、国としては実験環境の整備や基盤的支援にとどめる姿勢を基本としています。特にMaaS(Mobility as a Service)のような統合交通プラットフォームについては、市民ニーズや技術進化のスピード感を考慮すると、国ではなく民間が主体となるべきとの認識です。
一方で、より実験的な取り組みである「デジタルツイン都市開発」には一定の関与を検討しており、特にコンパクトシティ構想の実証モデルとして、鉄道網を基盤とした都市設計に挑戦したいとしています。このため、1〜2か所の自治体と協力して、スマートな都市運営と環境保全が両立する形の実証特区を設置することを目指します。
また、5G/6Gのローカルネットワークについては、将来の行政効率や地域サービスの高度化を見据え、役所周辺など最低限の公共空間での整備に補助を出す方向で検討します。全国整備とまではいかずとも、モデル的な活用拠点の形成を進めたい考えです。
行政と民間のデータ連携については、API標準化や相互運用性の確保といった技術課題を含め、デジタル庁の主導のもと粛々と整備を進めるべきとしています。その際、優先順位付けについてはパブリックコメントなどを通じた市民や民間の声を踏まえつつ、実効性ある制度設計を行っていく方針です。
公共安全・法務
警察・治安維持
警察の広域連携捜査や警察庁直轄事件の拡大については、近年の複雑化・広域化する事件に対処するためには一定の柔軟性が必要と考えます。ただし、依然として多くの事件が都道府県警で処理されている現状に鑑みると、現場の力を尊重することが大前提です。したがって、制度変更よりもまずは、都道府県警同士および警察庁との人材交流や捜査事例の共有を進める「顔の見える連携体制」づくりを重視します。
ボディカメラの導入については、将来的な証拠保全や職務透明性の向上に資すると考え、段階的に導入を進める方針です。制度の設計にあたっては、録画データの保管・活用ルール、プライバシー保護とのバランスなど丁寧な運用ガイドラインの整備が不可欠です。
また、ドメスティックバイオレンスやストーカー対策については、警察単独では限界があり、厚労省をはじめとする他機関との連携が不可欠です。場合によっては、捜査権限を持つ厚労省傘下の新組織設立も検討に値すると考えています。根本的な被害防止・支援体制の構築には、縦割りの打破が必要です。
最後に、交番を中心とした地域連携モデルについては、住民との信頼関係を築く警察の「顔」として、今後も強化を図ります。地域課は警察の“花形”であるという文化的評価の醸成と、それに見合った人的・財政的支援を進めたいと考えています。
犯罪被害者支援
犯罪被害者支援の拡充について、労働党は極めて前向きな姿勢を取っています。被害者等給付金の制度は現在でも機能していますが、金額・支給対象ともに不十分と考えており、より実効性ある制度に再設計する必要があります。その財源として弁護士報酬への目的税導入を検討していますが、当然ながら弁護士会との丁寧な対話が不可欠です。被害者支援は制度と財源の両輪で前進すべき課題です。
ワンストップ支援センターの全国整備は、現行の支援体制の最大の課題の一つと認識しており、急ぎ推進すべきです。性犯罪など複合的な被害に直面する方々に対し、相談・医療・法的手続を一体的に支援できる体制が求められます。センター設置だけでなく、各地での人材育成や運営モデルの標準化にも取り組みます。
性犯罪の時効延長・非親告罪化については、非常にセンシティブな課題です。特に、被害認知が遅れることの多い性被害の性質を踏まえると、時効制度の見直しは合理的であると考えます。一方で、捜査の難しさや冤罪リスクもあるため、児童相談所や支援センターなどの公的支援機関が代わって告訴できる制度の導入なども含め、柔軟な選択肢を議論したいと考えています。
リベンジポルノ対策については、情報発信者に対する刑事責任だけでなく、プラットフォーム側の責任にも一定の検討が必要と考えます。単なる「削除要請義務」だけでなく、悪質性の高い拡散支援については、犯罪幇助の観点から責任を問う可能性を探ります。ただし、過去のWinny事件のような技術規制と共犯が成立するかのバランスには慎重を期すべきであり、広範な議論を重視します。
刑事司法改革
労働党は、刑事司法制度の透明性と公正性を高めるための一連の改革に前向きな立場を取ります。取り調べの可視化については、その対象範囲を段階的に拡大していく方針です。また、代用監獄制度の見直しについても、国際的な批判や人権保障の観点から、制度自体の存在意義を再評価する必要があると考えています。これにより、被疑者の権利保護を強化し、冤罪のリスクを減らす基盤を整備したいと考えます。
さらに、刑務所の運営においても民間委託の活用を進め、単なる収監にとどまらず、出所後の社会復帰を見据えた更生支援の仕組みを拡充します。裁判員制度に関しては、対象事件の拡大と匿名性の確保を並行して進めることで、市民の司法参加を促進しつつ、負担やリスクを最小限に抑える制度設計を模索します。
ただし、これらの改革はいずれも「制度のバランス」に配慮する必要があり、急激な変更は制度全体の歪みを招く懸念もあります。労働党は、ひとつひとつの改革を実施した後の実態を丁寧に観察し、必要に応じて修正・撤退も視野に入れる「試行と検証」のサイクルを重視する立場を取ります。
司法アクセス
労働党は、司法アクセスの平等性を高めるために、法テラスの機能強化と無料法律相談の拡充を重視します。経済的事情にかかわらず、すべての市民が法的支援を受けられる体制を整えることが、社会的公正の土台だと考えています。また、オンライン裁判やウェブ提出の導入も積極的に進め、物理的・時間的制約を減らし、より多くの人が司法にアクセスできる社会を目指します。
一方で、こうした司法アクセスの改善が、どこまで国家の責務であるべきかという点には疑問もあります。本来、弁護士会や法曹界自身が公益性をもって主導すべきではないのか。国家がどこまで制度設計や資金支援に関与し、どこからは法曹界が自律的に進めるべきかについては、今一度丁寧な議論が必要でしょう。
また、弁護士過疎地域対策として、医師不足地域に対応する自治医科大学のような地域枠制度の導入や、法科大学院の学生ローン減免による支援策を検討します。加えて、迅速かつ低コストな紛争解決手段であるADR(裁判外紛争解決手続)の普及にも注目しており、その活用促進のために、制度の見える化と信頼性向上、人材育成を後押ししていきたいと考えます。
テロ・サイバー犯罪対策
テロ対策において、空港や大規模ターミナルなど「ハイリスク施設」への警備強化は避けて通れないと認識しています。技術革新によって、少人数でも大規模な破壊行為が可能になってしまった現代において、抑止力と即応力の強化は国家の責務です。一方で、この対策には多大なコストがかかり、市民生活の利便性や空間の開放性が犠牲になる側面もあります。共助金制度などを活用しつつ、自治体や民間と連携した現実的なセキュリティ水準の設定が求められます。
サイバー攻撃に対しては、事後報告の義務化を進め、被害実態の可視化とノウハウの共有を図る必要があります。被害の報告がなされなければ、脆弱性は社会全体に放置されることになります。特に重要インフラを担う事業者に対しては、演習やCSIRT(Computer Security Incident Response Team)体制の構築・強化を支援すべきです。IPA(情報処理推進機構)など、既存機関の能力強化にも予算措置が必要と考えます。
一方、デジタル通貨の普及に伴い、マネーロンダリング規制の強化も急務です。この領域は国際協調なくして成立せず、日本単独では限界があります。しかし、「どう規制するか」という技術的な詳細については未解決の課題が多く、実務や民間の知見との連携を深めて慎重に制度設計を行うべきです。
司法改革・人権
裁判所制度・陪審員制度
裁判所制度については、現行の最高裁判所による違憲審査体制を維持する方針です。いわゆる「憲法裁判所」設置構想もありますが、憲法第76条第2項の趣旨に鑑みれば、最高裁の現在の役割と権限の中に憲法判断はすでに含まれており、新設の必要性は薄いと考えています。
国民参加型の司法を拡充する議論として、陪審員や参審員制度の導入も議論されていますが、労働党としては現時点では導入を見送るべきと考えます。なぜなら、司法の現場では人員も予算も不足しており、制度導入以前にまず体制整備が急務であるためです。形式よりもまず実質的な司法の信頼性を高めるべきです。
一方、専門性の高い紛争が増える中で、ITや医療、環境、経済犯罪などに対応できる「専門部門」の設置は積極的に検討すべきと考えます。すでに家庭裁判所や知財高裁、労働審判、海事部門など先例もあり、分野ごとの高度な専門性は司法の信頼を保つ上でも重要です。ただし、専門部門の濫立は避けねばならず、導入後の運用実績を踏まえ、逐次評価と見直しを行う仕組みが必要です。
司法予算の増額と人員体制の強化は、制度改善を進めるうえで欠かせない基盤です。特に専門裁判所やIT活用の推進には初期投資が必要ですが、現状では安定した財源が確保されていません。新たな目的税や法務関連予算の再編なども視野に入れ、財源確保のための議論を避けて通るべきではありません。
法曹養成・検察改革
法曹の養成制度に関して、まず明確に訴えたいのは、司法修習生の給費制を恒久化すべきだという立場です。司法修習には専念義務があり、アルバイトは禁止されている中で生活費の自己負担を求める制度設計は、現代においてもはや人権侵害とすら言えます。防衛大学校の学生に給与が支払われるのであれば、司法を担う人材にも同様の扱いが必要ではないでしょうか。司法の未来を担う若者に、経済的な不安を強いるべきではありません。
一方で、検察官人事の政治的独立性という極めて重要な論点について、現状の制度がどこまで政治からの独立を保てているのか、私たちには大きな疑問があります。法務省の中で検察庁がどのような独立性を持ち、誰の指揮命令に服しているのか、制度的にも実務的にも曖昧さが残っているように見受けられます。検察は行政の一部なのか、それとも司法の延長なのか。こうした根本的な問題は、制度そのものを再設計する必要があるかもしれません。
法科大学院の定員削減や予備試験制度の改革については、現時点で労働党としての確たる方針はありません。制度の変遷と現場での影響について、まずは十分な調査と当事者の声の収集が必要です。拙速な改革はかえって人材の多様性を損なう恐れがあり、慎重に進めるべき領域です。
また、取調べの在り方や検察による起訴独占の見直しについても、極めて専門的かつ制度的な影響が大きいため、現時点での明確な態度表明は困難です。これらは法曹界内部の議論や、専門家による慎重な検討を要する事項であり、労働党としてはその過程を尊重しつつ、透明性と説明責任を求めていく所存です。
表現の自由・メディア規制
まず特定秘密保護法と安全保障情報の取り扱いについて、労働党は行政の裁量で秘匿の範囲をある程度柔軟に拡大できるようにすべきと考えています。情報漏洩によるリスクは年々高まっており、即応性のある秘匿措置が必要です。ただし、その一方でチェック機構の設置は不可欠であり、立法府の内部に秘密情報を審査できる小委員会(秘密会)を新設するなど、三権分立のバランスを守る制度設計を強く求めたいと考えます。
ヘイトスピーチの抑止と言論の自由の両立は、極めて難しいテーマです。表現の自由は民主主義の根幹を成す一方で、社会秩序を脅かすような攻撃的言説が増加していることも事実です。労働党としては、法規制の可能性を示唆することで、一定の牽制効果を狙いたいと考えています。すなわち、法による制限は本意ではありませんが、自制を促すメッセージとしての「予告的検討」を有効なカードとして活用します。
ネット上の中傷や誹謗に関しては、プラットフォーム側の責任をより重く評価する方向を支持します。インフラとしてのシステムを提供している以上、そこで発生する有害コンテンツへの対応には当然責任が伴うはずです。中傷が可能な状態を長期間放置していたのであれば、それは構造的瑕疵であり、より厳しい規制やガイドライン策定の義務を負うべきでしょう。
最後に、放送法における「政治的公平性条項」については、その運用を緩和することも選択肢とすべきだと考えます。現状、YouTubeなどのインターネット動画サービスでは極端な意見や偏向した報道がむしろ人気を博しており、地上波放送だけを縛る現在の制度は現実に即していません。むしろ自由化を進め、コンテンツ全体の多様性の中で視聴者が判断する時代に入っていると捉えるべきです。
プライバシー・個人情報保護
まず、個人情報保護に関しては、国際的な整合性を重視し、EUのGDPR(一般データ保護規則)との足並みをそろえるべきと考えます。グローバルなデータ流通が常態化する中で、日本の法体系が孤立することは避けなければなりません。企業の対外取引やクラウドサービス利用にも影響が及ぶため、国際標準に合わせた制度設計が求められます。
また、データトラストやID連携については、マイナンバー制度との統合を軸に進めていくべきです。分散しているID管理や行政サービスの認証基盤を一本化し、利便性と効率性を高める方向で制度を再構築する必要があります。これは、住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)とマイナンバーの運用範囲拡大とも連動しており、行政内部での利用をより広範に展開していくことを視野に入れています。
ただし、これらの動きに対して国民の不安が根強く存在することも認識しなければなりません。特に、監視カメラや顔認識技術の導入・活用に関しては、強い懸念が表明されています。技術的には高い有用性を持つ一方で、政府への信頼が薄い現状では、規制の在り方そのものが問われます。従って、本件については拙速な制度化を避け、十分な議論を経たうえで透明性あるルール策定が求められます。
ヘイト・差別禁止法制
差別禁止に関する法制度は、社会の多様性と共生の実現に不可欠な柱である一方、短期的な立法対応ではむしろ社会的反発を招きかねません。したがって、労働党としては、包括的差別禁止法については国連の勧告を参照しながら、毎会期に少しずつの議論を積み上げ、二十年スパンの長期的取り組みとして慎重に前進させていきたいと考えています。急がず、しかし確実に制度整備を進めていくことで、社会的合意を築くことが重要だと捉えています。
先住民族の権利についても、日本列島の歴史的経緯や地域ごとの文化的多様性を踏まえた議論が必要です。アイヌや琉球といった固有の文化を持つ人々を「ヤマト化」したという歴史認識は否定できませんが、それを前提にした上で、現代的に彼らの文化をどう継承・尊重していくかが問われています。現実には、かつてのアイヌや琉球も単一ではなく、多様な文化集団の集合体だった可能性も踏まえつつ、象徴的な統合と文化的多元性の尊重のバランスを模索していきます。
障害者差別解消の措置義務や、SOGI(性的指向および性自認)ハラスメントの防止については、現時点で十分な知見を持たないため、具体的な制度設計について即断は避けたいと考えています。ただし、差別解消の方向性自体には反対するものではなく、必要に応じて制度的な対応のあり方を丁寧に検討してまいります。
総じて、ヘイトや差別の問題は、一足飛びに結論を出すのではなく、制度と社会感情の歩調を揃えながら、長期的に取り組むべきテーマであるというのが労働党の立場です。短期的な解決を謳うよりも、変化の積み重ねによって、より寛容で多様性を受け入れる社会を築いていくことを目指します。
男女共同参画・多様性
選択的夫婦別姓
労働党としては、選択的夫婦別姓制度の導入に関して「消極的賛成」の立場を取ります。つまり、現行制度の維持に理解を示しつつも、制度の選択肢を広げることには一定の合理性があると認めるものです。特に1876年の太政官指令以前、日本においては夫婦別姓が一般的であったという歴史的事実に照らせば、現行制度の方がむしろ近代以降の作為的なルールともいえます。したがって、選択的夫婦別姓は“伝統破壊”ではなく、“近代制度の見直し”として位置づけるべきでしょう。
ただし、制度導入にあたっては法技術的な課題も少なくありません。戸籍法および家族法の大幅な改正が必要となる点、また、子の氏の決定をめぐって親の意見が分かれる場合の調整ルールも明確に設けねばなりません。単に「選べるようにしました」で済む話ではなく、現実の家族関係に即した設計が求められます。
加えて、実務面でも配慮が必要です。例えば、住民基本台帳やマイナンバー制度との統合性の確保が必要であり、事務コストや自治体のオペレーション負荷を抑える制度設計が不可欠です。民間企業にとってもシステム改修が必要となるため、中小企業向けの支援措置が必要でしょう。制度を「導入すること」そのものが目的化しないよう、制度がもたらす影響を丁寧に評価し、段階的導入も含めて検討していきたいと考えています。
総じて、選択的夫婦別姓は、単に「賛成・反対」といった二元論で語られるべきではありません。制度の背景には歴史・法律・実務・文化が絡み合っており、冷静かつ丁寧な議論と設計が求められます。労働党としては、感情論やイデオロギーに流されず、事実に基づく制度設計を支持していきます。
ジェンダー平等・政治参画
労働党はジェンダー平等の理念には賛同しつつも、それを実現する手段については慎重かつ段階的なアプローチを取ります。たとえば政治分野への女性進出を促す「クオータ制」については、自由な選挙の原則に反するとの立場から、法律による義務化には反対します。しかし、党内において候補者バランスを取る努力は可能であり、党首としては今後の候補者擁立にあたりクオータ制的な配慮を導入する意志があります(なお現時点ではひとり政党です)。
また、男女の賃金格差については、その存在と是正の必要性を認めたうえで、まずは「開示義務」の段階から導入し、民間の自発的取り組みに期待する立場をとります。いきなり是正計画の提出や強制措置に踏み切るのではなく、開示を通じて可視化・議論喚起を促すことが現実的だと考えます。
家事や育児の負担についても、原則として「男女の負担は同程度であるべき」という立場ですが、これも国家による介入によって達成するのではなく、文化的変容や社会的圧力、民間での働き方改革によって徐々に変えていくことが望ましいと考えています。そもそも育児はかつて「地域ぐるみ」で行われていた歴史があり、現代の核家族化と育児孤立の問題を解決するためには、その社会的再設計が必要です。
一方で、性暴力防止教育の義務化については、現時点では学校現場のリソースや専門人材の不足から、拙速な導入は難しいと考えています。この分野の支援を進めることには前向きであるものの、まずは民間団体や専門機関との連携による段階的アプローチを模索すべきだと考えます。
LGBTQ+政策
LGBTQ+に関する政策について、労働党は基本的に多様性を尊重する立場に立ちつつも、現状の議論の未成熟さや制度との整合性に鑑みて慎重なアプローチを取ります。まず同性婚については、憲法24条の「両性の合意」という文言の解釈に課題があると認識しています。党首個人としてはこの「両性」を必ずしも男女に限定する必要はないと考えていますが、現行憲法との整合性を重視する立場からは、同性婚導入には憲法改正が必要との立場をとります。同性婚には反対ではなく、むしろ改憲を通じて可能とすべきとの立場です。
性自認や性的指向に基づく差別の禁止については、包括的差別禁止法の一環として、着実に制度整備を進めていくべきと考えています。特定の性的指向や性自認に対して差別があってはならず、法制度による一定の後押しが必要です。一方、トランスジェンダーの医療支援体制整備については、国家の直接関与よりも、民間の医療機関と当事者団体の協力による対応が適している可能性が高く、慎重な検討を要すると考えます。
また、学校教育におけるSOGI(性的指向および性自認)教育の義務化には反対の立場です。労働党は、LGBTQ+という固定的・限定的な分類に異を唱えており、性的指向や性自認は本来もっと流動的かつ多様なものであるべきだと考えています。教育現場で画一的にカテゴライズされた理解を教えることには懸念があり、社会的・文化的な議論の成熟が進むまでは、学校教育として制度化すべきではないと考えます。
外国人との共生
労働党は、外国人との共生を「ともに暮らす」ための制度整備として捉えます。ただし、積極的な権利拡大ではなく、日本社会との適応・同化を前提とした制度的補完に重きを置きます。公立学校での言語・生活支援や、医療・通訳体制の整備に関しては、党として提案する「ユニバーサルアクセス支援室」が、外国人に限らず情報アクセス困難な人々全体への横断的支援組織として機能し得ると考えています。これにより、外国人児童・生徒が教育現場で孤立することなく、必要な行政サービスへのアクセスが容易になることを目指します。
永住許可については慎重な姿勢をとります。要件の緩和には反対であり、日本社会の一員としての定住を望むのであれば、一定の文化的理解や生活基盤の整備は不可欠と考えます。一方で、すでに定住している人々に対する更新手続の簡素化は合理的であり、過度な事務負担を避けるべきです。また、犯罪歴のある外国人に対しては、厳格に退去を求める立場を取ります。
多文化共生のための拠点整備については、専用の「多文化共生センター」などの新設には慎重です。既存の民生委員、自治会、町内会などの制度や仕組みを拡張し、外国人との関係性を育むことが現実的かつ持続可能であると考えます。新たな施設や制度を乱立するよりも、既存の基盤の多言語対応・多文化対応力を高めることに重点を置く方針です。
少数民族・先住民族政策
労働党は、少数民族や先住民族の文化や生活様式の尊重は重要と考えつつも、その支援のあり方には慎重な立場をとります。たとえば、アイヌ文化振興法の拡充については、文化保護の名の下で隔離や特殊扱いが進んでしまうことに危惧を抱いています。むしろ、アイヌ文化を日本文化の一部として取り込み、同化を通じて双方の理解と融合を促すアプローチが望ましいと考えています。これは、アイヌ側の文化を尊重すると同時に、大和文化側の在り方も柔軟に再解釈していく双方向の同化であり、国家内における平等な文化的地位の確立を目指すものです。
沖縄振興については、現地の声に最大限の敬意を払うべきとの立場から、現行制度の次期枠組みの在り方に関しては、まず沖縄出身の関係者や自治体の意見を十分に反映したうえで制度設計を進める必要があると考えています。中央政府が一方的に制度を構築するのではなく、地域発の提案を国がサポートする形が望ましいとします。
伝統的生活文化の保護については、形式的な保護策を乱立させることには否定的です。本当に生活の中に根ざしている文化であれば、それは制度的に保護されなくても生き残るべきものであり、逆に形式だけの制度保護が文化の形骸化を助長する懸念もあります。文化はあくまで日常の中で自然に息づいてこそ意味があると考えます。
先住民族の自己決定権については、現段階では認めるべきではないという立場を取ります。日本社会において自己決定権の主張は、分離独立や過度な権利分配といった誤解や反発を招きかねず、むしろ少数派に対する逆風となる可能性があります。国家全体の一体性を維持しつつ、文化的・生活的な多様性を尊重する方針を採ることが、共生に資する現実的な道だと考えます。
消費者・暮らし・コミュニティ
消費者保護・製品安全
消費者保護におけるデジタル時代の課題として、ステルスマーケティングやサブスクリプション契約など、消費者が不利益を被る仕組みが巧妙化しています。特にステルスマーケティングに対しては、広告主側の責任を明確にし、悪質なケースには罰則の導入も視野に入れたいと考えています。ただし、自由な表現や業界の実態とのバランスも求められるため、導入のハードルが高いことも認識しています。
サブスク契約や自動継続のいわゆる“ダークパターン”については、より強い規制が必要です。契約更新時の表示義務を徹底し、法人に対しては罰金を科す制度の整備を検討します。これは単に消費者保護という視点だけでなく、悪質事業者への抑止効果と若干の財源確保も兼ねています。
また、製品のリコール情報については、消費者庁とデジタル庁が連携し、オープンデータ化を進めるべきです。行政間のデータ連携やアプリ等での自動通知システムの開発も併せて検討したいところです。これにより、消費者自身がリスクを把握しやすくなる環境整備が進むと期待されます。
ネット通販や個人輸入を通じた製品流通が一般化する中で、製造物責任(PL法)の適用範囲も再整理が必要です。労働党としては、販売チャネルにかかわらず、消費者が正当な安全性を期待できる環境を守るべきと考えており、無人店舗や個人輸入においても一定の責任は問われるべきとの立場を取ります。
公共料金・光熱費対策
公共料金や光熱費の問題については、制度や価格形成が高度に専門的であるため、現時点での明確な方針提示は困難です。特に電力・ガスの規制料金の見直しや、再エネ賦課金の調整といった分野は、制度設計の専門性が高く、十分な議論と検証を経たうえでなければ、拙速な発言は避けたいと考えています。
また、上下水道事業のコンセッション方式(民営化)とそれに伴う料金監視についても、生活インフラの根幹にかかわる問題でありながら、自治体ごとの事情が複雑で、一律の方針を示すのは困難です。現時点では慎重に議論を見守る立場にとどめます。
とはいえ、低所得世帯へのエネルギー補助は、生活に直結する切実な課題であり、何らかの支援策が必要だと認識しています。財源確保の問題はありますが、少なくとも困窮家庭が冬に凍え、夏に熱中症で倒れるような社会にはしたくありません。やるべきことは多い、でもできることから、というスタンスで臨みたいと考えています。
地域コミュニティ・NPO支援
町内会や自治会の活性化は、地域の地縁や支え合いを取り戻すためにも重要と考えています。とりわけ労働党が掲げる「ベーシック・オキュペーション」構想においては、地域で担う仕事の発注主体として町内会・自治会を想定しており、その意味でもこれらの団体の再活性化は不可欠です。活性化基金を通じた支援を検討し、地道な関係性の回復に向けた取り組みを後押ししていきます。
一方で、こども食堂や地域食支援といったNPOの取り組みは重要であり、当面は一定の助成を進めます。ただし中長期的には、こうした機能を「子ども支援センター」のような公的な枠組みに統合していく構想を持っています。また、NPOは本来的には市民の自発的活動であり、税金や助成への依存を常態化させるべきではないという立場です。助成依存型のNPOは、行政の下請けか外郭団体に見えてしまい、市民による監視が働きにくくなるという問題もあります。
その意味で、たとえ公益性が高い活動であっても、「社会的インパクト投資」への税優遇などによって過度に資金の流れを誘導することには慎重です。公的資金と民間の自主性のバランスは常に問い直すべきテーマであり、特に支援対象が公共セクターと曖昧な境界にある場合には、慎重な線引きが求められると考えています。
ボランティア・社会的連帯
まず、災害時のボランティア参加を促進するための環境整備として、「災害ボランティア保険」の手続き簡素化は推進します。突発的な災害に迅速に対応できるよう、保険制度の運用を見直し、負担の少ない形での加入を可能にしたいと考えています。こうした制度整備は、地域の自助・共助を支える土台の一部となります。
次に、社会的起業家の育成についても肯定的に捉えています。公的課題の解決に民間から挑む事業者を増やすことは望ましい動きですが、労働党としては、あくまで「自立した起業家」として活動することを基本とし、過度に補助金・助成金に頼る体制は避けるべきと考えます。よって育成は進めつつも、公金依存を常態化させない制度設計が重要です。
また、いわゆる「共助ITプラットフォーム」のような仕組みの開発には慎重な立場を取ります。乱立するシステムはかえって利用者の混乱や格差を生む可能性があるため、むしろ地元の民生委員や町内会といった既存の人的ネットワークを通じて、社会的弱者の発見や支援を行う体制を強化していくことが、現実的かつ継続可能な解決策だと考えています。
文化財・地域資源保全
文化財の保存修復については、クラウドファンディングの活用も一つの手段として肯定的にとらえています。市民の関心と共感を得られる取り組みは貴重であり、費用面でも有効ですが、あくまで一過性の支援に過ぎないという認識は必要です。安定した保全体制の構築には、持続可能な資金調達と制度設計が求められるでしょう。
歴史的建造物の利活用については、用途転換を促進することに前向きです。法的な制限を緩和することで活用の幅を広げつつも、保存団体や地域住民との合意形成を前提とした慎重なプロセスが必要です。特にその土地の記憶や共同体意識と密接に結びつく建物の場合、地元の声を尊重することが不可欠です。
一方で、祭りや無形文化財の継承支援については意欲があるものの、担い手の確保が大きな課題です。補助制度を整備すること自体は推進したいものの、現実として後継者に「担ってほしい」と言える環境や魅力が欠けている点は否定できません。また、景観法や開発規制の見直しについては、制度成立の経緯を十分理解した上でなければ判断できないとし、今後の学習と議論を経た対応を検討しています。
情報・通信・デジタル
ICTインフラ
労働党は、情報通信インフラの整備は国家の責任であり、民間任せにするには限界があると認識しています。特に5G基地局の整備やローカル5Gの支援については、地方のインフラ格差や災害時の復旧性を考慮して、積極的な国の関与と支援を進めていきます。5G技術は単なる通信速度の向上にとどまらず、遠隔医療・スマート農業・災害対応などの基盤でもあり、国民の安心と利便性を高めるインフラと位置づけます。
その一環として、衛星コンステレーション(多層・多数の衛星ネットワーク)も活用し、山間部や離島など従来の有線整備が難しい地域へのアクセス改善を図ります。また、都市部においても10Gbps級の超高速光ファイバー網の整備を支援し、家庭や事業者への利便性向上と地域間格差の是正を進めます。こうした高速ネットワークの整備は、学びや働き方の選択肢を広げ、地方からでも未来に挑戦できる環境づくりの一部です。
一方で「デジタル・ディバイド(情報格差)」の解消という理念には共感しつつも、その実現方法については慎重です。物理的な通信網の整備だけでなく、機器操作やデジタルリテラシーの格差をどう埋めるかは容易ではありません。高齢者や障害者を含む「情報弱者」を支援することは重要であるものの、国家による一律の強制ではなく、地域やコミュニティに根ざした取り組みとセットでなければ意味を成しません。
サイバーセキュリティ
サイバーセキュリティは国家安全保障に直結する分野であり、とりわけ電力・交通・医療などの重要インフラに対する防御体制の強化は急務です。労働党としては、重要インフラ事業者に対するサイバーセキュリティ義務について、国主導で明確なガイドラインを整備し、民間との連携体制を構築していく方針です。特に中小規模のインフラ事業者にとっては、自助努力では限界があることから、支援の仕組みも併せて整備する必要があります。
サイバー対策の体制面では、現行の国家サイバー統括室(NCO)を強化し、国家レベルで一元的に対応できる「国家サイバー庁」設置構想についても前向きに検討します。とはいえ、行政組織の肥大化には慎重であるべきであり、既存組織の機能整理と統合を先に行った上での判断が望まれます。なお、すでに準備は進んでいるとも聞いており、その状況を確認しつつ、必要に応じて立法的支援を行います。
また、サイバー防衛の担い手として不可欠なホワイトハッカーやセキュリティ専門人材については、育成・確保の両面で政策支援が求められます。とくに外国人技術者に対する人材ビザの整備は、国内人材不足を補う上で不可欠です。この点に関しては、学術界(例:情報処理学会や日本学術会議)と連携しつつ、実効性ある制度設計を検討したいと考えています。
最後に、サイバー攻撃への能動的防御、いわゆる「ハックバック」については、非常に慎重な対応が求められます。労働党としては、現時点では自衛隊など防衛当局に対応の主体を委ね、国会が適切に監督・報告を受けるという体制を志向します。報復型防御が国家間の軋轢を生まないよう、国際法や外交的観点も踏まえた慎重な設計が不可欠です。
AI・データガバナンス
生成AIの急速な普及と技術革新は社会に大きな恩恵をもたらす一方で、著作権処理や出力の透明性といった課題が噴出しており、すでに収拾がつかない様相を呈しています。労働党としては、この混乱を逆手にとり、日本国内で一定の収益を上げるAI関連企業から目的税を徴収することを提案します。この税収は、クリエイター支援や文化振興基金など、既存の文化的土壌を守るための財源に充てられるべきだと考えます。AIがコンテンツの地平を押し広げるならば、その地盤を守る役割も必要なのです。
一方、公共部門におけるデータ利活用は、今後の行政改革や市民サービスの質的向上に直結する重要なテーマです。労働党は「データスペース構想」を支持し、公文書館のデジタル整備と、そこで蓄積されたデータを学習素材とする公共AIの導入を進めます。これは、国家的知見の民主化と、より開かれた行政を実現する足がかりでもあります。
アルゴリズムに関する説明責任やバイアスの検証については、理想的なゴールが見えない極めて難度の高い分野です。労働党としては、消費者庁と情報処理学会にこの問題を委ね、社会的合意形成に向けた指針の策定を期待します。民間・学術・行政の連携によってのみ、納得感のあるガイドラインが構築されるでしょう。
最後に、オープンデータと公共データAPIの活用については全面的に推進する立場です。地域課題の可視化や民間の創造的なサービス開発に資するインフラとして、政府保有データの積極的公開は「開かれた行政」の象徴でもあります。標準化と持続的更新のため、ルール整備と自治体支援も併せて行っていく必要があります。
放送・通信行政
放送と通信の融合が進む中で、「放送と通信の一元規制」には反対の立場を取ります。ただし、通信技術を用いて実質的に放送と同等の影響力を持つコンテンツには、一定の規制を課す必要性を感じています。たとえば、YouTube LiveやSNSライブ配信のような即時性と拡散力を持つ情報発信は、公共的性格を帯びるケースもあるため、既存の放送法の枠組みを拡張して対応できるか検討を進めたいところです。
ローカル局の再編や地域メディアへの支援については、中央集権的な情報発信に偏りがちな現代において、むしろ地域視点の多様な報道はより一層重要になると考えます。ただし、国家が直接的に関与しすぎることによって言論の自由に影響を与えてはならず、支援の手法については慎重に設計する必要があります。具体的には、資本支援ではなくインフラ整備や取材ネットワークの共用促進など、間接的支援策が望ましいでしょう。
また、メディア集中排除原則の見直しについては、もはや従来の「新聞・テレビ・ラジオ・ネット」といった業態の区別が意味を持たなくなってきている現状を踏まえ、地域メディアを守る観点から一定の緩和が必要だと考えています。とはいえ無制限な寡占を許すわけにはいかないため、グループ全体でのメディア資本の総量規制(いわば“総務省版アンチトラスト”)の導入などを検討していきたいです。
NHK受信料制度については、現時点で制度変更の必要性はないとの立場を取ります。公共放送としての役割を引き続き果たしてもらうことが前提であり、その監視体制と透明性向上に力を注ぐべきと考えます。
プラットフォーム規制
プラットフォーム企業に対する規制強化は、今後の健全なデジタル社会を築く上で不可欠だと考えています。EUが導入したDMA(デジタル市場法)およびDSA(デジタルサービス法)のような包括的枠組みは、日本においても検討を進め、段階的に導入を目指すべきです。特に、アプリストアにおける手数料の独占的設定は市場の健全な競争を妨げているため、規制を導入して中小事業者にも参入の機会を広げていく必要があります。
SNSにおける違法・有害情報の迅速な削除についても、表現の自由とのバランスを図りながら、一定の強制力を持った対応が求められます。現在は違法な薬物販売や詐欺、差別扇動などの情報が容易に流通しており、既存のガイドラインや自律的対応では追いつかない状況です。よって、プラットフォームには責任ある情報管理体制の構築を義務づけ、罰則を伴う制度設計を検討していきます。
さらに、デジタル広告の透明化は急務です。ターゲティング広告がどのように最適化され、どのような情報がユーザーから収集されているのかがブラックボックスとなっている現在、自主規制ではもはや限界です。広告の出稿元、表示ロジック、個人データの使用目的などについて明示義務を課し、ユーザーが自身の情報に対するコントロール権を取り戻せるようにします。
全体として、現在の巨大プラットフォーム企業に対する「自浄作用」には期待できないとの立場を取り、一定の強制力を持ったルール導入に向けて、制度設計・運用基準の整備を急ぎたいと考えています。これは決して企業への敵対ではなく、公共の信頼を回復し、健全な市場競争と情報空間を守るための措置です。
観光・スポーツ・国際イベント
観光立国戦略・ビザ政策
日本はすでに訪日観光客数において一定の「量」を達成しており、今後は「質」の向上が重要だという立場を取ります。観光立国としての戦略は、滞在の快適性や再訪意欲を高める施策にシフトすべきであり、その一環として個人旅行ビザ免除国の拡大にも前向きです。また、国際クルーズ船受け入れのためのインフラ整備を含め、観光客の流入経路を多様化し、幅広い層の来訪を促進したいと考えています。
一方で、観光公害(オーバーツーリズム)への対策は急務と認識しています。観光客が集中する地域では生活インフラや治安への悪影響も無視できず、持続可能な観光のためには、出入国税や外国人向け宿泊税などの課税を積極的に検討すべきだと考えています。これにより、観光客の質的担保を目指すと同時に、税収は原則として当該地域自治体へ還元し、地域の負担軽減や観光基盤の整備に活用してもらいたいです。
観光客の増加に伴う治安・トラブル対応の強化も重要です。観光警察や多言語通報システムの導入は不可欠と考えますが、コスト効率の観点から、都道府県警ごとの整備ではなく、警察庁の管轄下に集中的に設置・運用する形を志向しています。全国規模での整備と訓練を進めつつ、観光先進国としての信頼性の向上を目指します。
インバウンド振興
インバウンド観光の振興にあたっては、地域DMO(Destination Management/Marketing Organization)の強化やマーケティング支援といった施策は一定の効果が見込まれるものの、それらは本来的に地域自治体や観光業界自身が担うべき性質のものであり、国が直接的に行うべきではないという立場です。現場の裁量を尊重しつつ、政府はあくまで制度的・財政的な後方支援に徹するべきだと考えます。
キャッシュレス決済の推進については、観光客の利便性向上に資するだけでなく、国内の決済インフラ近代化の観点からも強く推奨されるべき施策です。一方で免税制度の拡充には消極的で、むしろ適切な納税による「持続可能な観光財政」の確立が重要と考えます。短期滞在者に対しても一定の税負担を求め、観光地における公共サービスの安定的提供につなげたい意向です。
伝統文化体験プログラムの開発については、観光誘客のみならず地域の文化資源継承にも資するため、一定の国費投入も検討の余地があります。かつての「ふるさと創生事業」のような、文化・観光・地域活性を統合的に推進する国家プロジェクトの再編成は有力な選択肢となり得るでしょう。もちろん、過去の事業での失敗例に学びつつ、予算や成果の透明性を確保する必要はあります。
ムスリムやベジタリアン観光客への対応については、宗教や文化の多様性に関する知見の蓄積が不可欠であり、外務省などを通じた国際的な情報ネットワークの活用が望まれます。ただし、これは立法で規定すべきものかという点には疑義があり、むしろ業界団体や自治体、観光施設単位での自発的な対応やガイドライン整備によって進めるのが現実的と考えます。
スポーツ産業・プロリーグ
スタジアムやアリーナの整備に関しては、原則として地方自治体主導のPPP(官民連携)で進められるべきであり、国が直接的に関与する必要性は低いと判断しています。地域に密着した施設整備には、その地域における行政・住民・クラブチーム等の関係者の合意形成が何よりも重要であり、国としては財政面での一定の支援を行うに留めるべきです。
部活動の地域移行や、それに伴う指導者の育成についても、制度設計・運用においては自治体の主体性が求められる領域です。学校単位から地域単位への移行は急激な制度転換を伴うため、国が一律のモデルを押し付けるよりも、自治体の多様な取り組みを尊重しつつ、必要な場合の技術的・財政的支援にとどめる方針とします。端的に言えば、「丸投げさせてください」が正直な本音です。
障害者スポーツの支援とパラリンピックの強化については、強く推進する立場です。健常者との統合的な大会、たとえば国民体育大会(国体)内での障害者競技の拡充なども視野に、制度的・文化的な障壁を低減させたいと考えます。これは単なる競技振興ではなく、社会的包摂(インクルージョン)の象徴的意義を有しています。
スポーツベッティングの解禁については、オンラインカジノや違法賭博に資金が流出する現状を前提に、あくまで現実的な次善策としての「消極的選択肢」として検討を進めます。ただし倫理的な問題は重く、またギャンブル依存症等の社会的コストについても十分な議論が必要です。進めるとしても、厳格な制限と課税・福祉連携を前提とした制度設計が不可欠です。
文化・国際博覧会・万博
2025年大阪・関西万博のレガシー活用については、開催地である大阪府・市の責任と裁量に委ねられるべきであり、国が主導的に関与するべきではありません。国家がレガシー活用に過度に口を出すことは、かえって地域主導の柔軟な施策を阻害しかねません。万博後の施設の活用や交通・都市機能との連携等は、地域の経済構造や文化的土壌と密接に結びついているため、地域ごとの判断に委ねられるべきです。
一方で、世界文化遺産や無形文化遺産の登録戦略、映画・アニメといった文化産業の海外展開、さらには文化イベントのオンライン配信支援といったソフトパワー施策は、国際的な文脈において日本の存在感を高める機会でもあります。しかしながら、これらの分野において国が過度に介入し主導権を握ると、かえって現場感覚を失い、実効性のない制度疲労を招く可能性があります。
したがって、国の役割はあくまで「黒子」としてのサポートに徹するべきです。文化関連団体や民間セクター、地域コミュニティの声に耳を傾け、その活動を支える資金的・制度的なインフラを整えることに注力すべきです。文化は上から育てるものではなく、下から自然に芽吹くものであり、それを可能にする環境整備こそが政策的貢献の本質です。
国際イベントを通じた文化発信は重要ですが、統一的ブランド戦略を押し付けるのではなく、多様な文化表現が自然に広がるような「余白」を制度面でどう支えるかが問われています。その意味で、民間の主体性を最大限尊重することを前提に、選択的・補完的な支援にとどめるべきです。
地方観光資源の磨き上げ
地方観光資源の活用については、政府として積極的な関与と制度的後押しを進めていきたい分野です。特に国立公園の野営地を民間に開放することは、環境に配慮した持続可能な観光の促進と、地域経済への波及効果の両面から歓迎すべき施策です。自然を活かした滞在型観光の需要が高まる中、規制緩和と公的インフラの利活用をセットにした支援が有効と考えます。
また、人口減少により使われなくなった廃線・廃校を、観光や地域振興の資源として再活用することも推進したい政策です。鉄道遺産や学びの記憶が残る施設を観光資源へ転換することは、地域に眠る「物語」を再発見し、外部との交流を生む手段として非常に有効です。このような施策には、観光庁や文科省による横断的支援も視野に入れつつ、地域主導で柔軟に展開できる制度設計が必要です。
ワーケーション拠点の整備および交通費補助についても、地方移住促進や関係人口拡大といった国家的課題への解決策の一環として位置づけ、広域連携で進めるべきです。特に通信インフラ・滞在環境・アクセスの3要素を整備するための交付金や補助制度を設け、地方自治体と連携しながら取り組んでいきます。
最後に、地域通訳案内士の育成は観光の質的向上に不可欠であり、多言語対応・地域知識・接遇力を兼ね備えた人材を地域内に育成・定着させるため、講習制度の充実やインセンティブ支援を検討していきます。すべての施策は「地域に根ざした観光」を前提に、官民連携で丁寧に育てていく方針です。